第2章 〜作用と効果〜
http://www.riebella.com/aroma_gaiyou4.html
2.1 アロマテラピーの作用機序
人間はアロマテラピーによって、苦痛緩和や、喜び、至福感、リラックス、興奮などの感情を引き起こす。では、どのようにしてこれらの感情を持つに至るのだろうか。アロマテラピーは主に嗅覚に作用する。におい分子がまず鼻に吸い込まれ、鼻の奥の嗅覚器官に到達する。嗅覚器官は、粘膜に覆われている一円玉にも満たない小さな組織であり、その小さな組織は1000万もの嗅覚神経細胞からなる。それぞれの嗅覚細胞は、嗅繊毛をもっており、嗅繊毛の上ににおい分子の受容体が存在する。嗅覚器官にやってきたにおい分子は嗅繊毛上の受容体に結合し、嗅覚細胞が興奮する。嗅神経はにおいの情報を電気信号に変換して、感情、情動をつかさどる中枢、大脳辺縁系に送る。脳下垂体は情報を、全ての知覚、高度な思考と結びつける働きをする大脳皮質に送る。それにより、神経伝達系が働き、種々の神経伝達物質が分泌されて、様々な感情を引き起こす。・・・と説明はしたものの、嗅覚は五感のうちでも、最も研究の遅れている分野であり、まだまだ謎だらけである。しかし最近、嗅覚の研究も次第に進んできている。R.アクセル博士とバック博士は「におい受容体と嗅覚系の機構の発見」で2004年ノーベル医学生理学賞を受賞した。彼らの研究から次のような事が解明された。におい分子の受容体は人間で約350種類あり、それぞれの受容体は特定のにおい分子としか反応しない。また、人間の鼻は約10万のにおいをかぎわけることができる。では、どうしたら350種類の受容体で10万のにおいを識別できるのだろうか?においとは、複数のにおい分子によって生じる。そしてにおいの違いはにおい分子の違いであり、反応する受容体の違いである。人間は受容体の組み合わせの違いを脳で認識することによって、少ない種類の受容体から受容体の種類を大幅に上回るにおいを識別できるのである。
参考
http://www.nsdigital.net/JCSRI/olfaction/
2.2 一般的な効用〜においが体の各器官に与える影響〜
嗅覚は扁桃核や視床下部で、呼吸、循環、消化吸収機能を支配する神経と連絡しているため、においは体のいろいろな働きに影響を与える。
呼吸器では、良いにおいを嗅ぐと思わず深く息を吸い、疑わしいにおいを嗅ぐと短く強く吸ってそれが何かを確かめようとする反応が起こる。また悪臭を嗅ぐと無意識的に息を止める反応が起こる。
消化器では、ご馳走のにおいを嗅ぐとお腹がグーとなったり、急に空腹を感じたりする。反対に腐ったもののにおいを嗅ぐと食欲は無くなり、吐気を感じたり実際に嘔吐したりする。これらのにおいのうち前者は消化器の運動を高め、消化液の分泌を促す。後者は逆に胃腸の活動を抑える。
循環器系に対して、良いにおいは血圧を降下させ、過度の緊張をほぐす(リラックス)効果がある。この結果、良いにおいを嗅ぐと気分が良くなったり、また冷静になったりする。
皮膚系に対してにおいは皮膚の電気抵抗の変化をもたらす。においが強いほど、また不快なほどこの抵抗変化は一般に大きく出る。この変化は次に述べる精神活動の変化と対応して起こる。
においは精神活動にも影響を及ぼす。悪臭を嗅ぐと頭重感や頭痛を起こしたり、いらいらした気分に陥り、活動意欲を失う。逆に良いにおいを嗅ぐと気分が爽快となる。この影響は何か一つの仕事に集中しているときはそれほどでなくとも、くつろいだ気分のときには大きくなる。
生殖器への影響はフェロモンが良く言われる。動物の雌が雄を、雄が雌を探しあてるのはにおいによることが多く、このように特別な意味を持ったにおいをフェロモンと呼ぶ。また動物によってはにおいによって子宮活動が変化し、流産するものもある。ヒトの場合は妊娠した女性がにおいだけで流産したということは聞かないが、においの中には男性にはあまり感じないのに女性が特に敏感に感じ、嫌がるにおいが知られている。このことから一部のにおいは生殖と深い関係があることが分かる。
アロマテラピーではこうした作用の内、有用な効果を持つにおいを用いる。目的に合わせて、用いるにおいを選ぶが、効果の程度には個人差がある。というのもアロマテラピーはもともと生体が持っている機能にスイッチを入れるといった面が大きいからである。またそのスイッチがうまく入るか入らないかも個人によって異なる。
「良い」というのは主観的な判断で、個人に依って好きなにおいにばらつきがある。この好悪にはその人がどういった環境でどういった経験をして来たかということが大きく影響すると言われる。
参考
青春出版社 外崎肇一著 「におい」と「香り」の正体
朝倉書店 藤巻正夫他編 香料の事典
2.3 種類と効用
■イランイラン
主要成分:リナロール、酢酸ベンジン、p-クレシルメチールエーテル
心 |
アドレナリンの流出を抑制し、神経系をリラックスさせ、喜びの感情をもたらし、怒り、不安、ショック、パニック、恐怖などの感情をときほぐす。 |
身体 |
ホルモンバランスをとる作用をもち、生殖器系の障害に価値を発揮する。子宮の強壮剤になり、帝王切開出産のあとに役立つ。抗鬱、催淫の両特性をもつので、インポテンツや冷感症のような性的障害を好転させる。 過呼吸と頻拍をなおすのに有益であり、鎮静特性により降圧作用をもたらす。また、全体として神経系にたいしてリラックス効果がある。 |
肌 |
皮脂の分泌のバランスをよくする作用があるため、脂性肌にも乾燥肌にも有効である。また、頭皮に対して強壮・刺激の両効果があり、ヘアの成長をいっそうよくする。 |
■オレンジ・スィート
主要成分:リモネン、リナロール、フロクマリン
心 |
強壮作用、抗鬱作用により、うんざりした時・考え方が暗くなった時・抑鬱的な時・エネルギーが無くなった時に、心を明るく高揚させる。建設的なものの見方ができるようにする。抗鬱作用、鎮静作用により、緊張とストレスを払い、リラックスさせ、不安からくる不眠症に効果を示す。 |
身体 |
胃にたいして非常に強力な鎮静作用を発揮する。神経質な状態での胃に特に効果を示し、いわゆる胸騒ぎを鎮める。また、消化促進作用により、下痢や便秘のような腸の不調を改善する。胆汁の分泌を促進し、脂肪の消化を助け、コレステロールを低下させる。他に食欲増進作用がある。
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肌 |
発汗作用により、うっ滞を生じた肌から毒素をスピーディーに除去する。 |
■カモミール
主にカモミール・ローマンとカモミール・ジャーマンの2種類がある。
ジャーマンの主要成分:ビサボロールオキサイド、カマズレン、カンファー
ローマンの主要成分:アンゼリカ酸イソプチル、アンゼリカ酸イソアミル、ケトル
ジャーマンはリンパ系に作用し、慢性的な感染症、偏頭痛に効果的。またカマズレンという抗炎症作用のある成分、そしてセスキテルペン類が多く含まれるため、スキントラブル(特にカユミ、湿疹、炎症)にも適している。一方、ローマンは鎮静作用のあるエステルの含有率が高く、神経系に作用するので、ストレス解消・不眠等により向いている。スキンケア・ヘアケアにも利用できる。
心 |
非常に緩和力が強く、不安、緊張、怒り、恐怖の念を和らげる。リラクセーションを促し、忍耐心と平和を与え、気苦労を軽減する。 |
身体 |
鎮痛作用により、筋肉痛、下背痛、頭痛、片頭痛、神経痛、歯痛、耳痛に効果がある。
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肌 |
皮膚軟化作用、止痒作用があり、乾燥してかゆみのある肌や老化肌に有効である。破れた毛細血管を治し肌の弾力性を高め、保湿する。 特にジャーマンは、消炎作用、殺菌作用があり、ニキビ、乾燥肌、日焼け、火傷、外傷、湿疹、虫さされ等に効果を発揮する。 |
■クラリセージ
主要成分:酢酸リナリル、リナロール、スクラレオール
心 |
加温性とリラックス作用により、神経が緊張している時、気がはやる時、パニックに陥った時に、心を静める。 |
身体 |
子宮のよい強壮剤になり、子宮のいろいろな障害にたいして役立つ。ホルモンバランスを調整する作用があり、少量月経を正常化し、月経前緊張症を和らげ、筋肉の緊張をほぐすのを促し、下背部の痛い痙縮を緩和させる。分娩を促進し、産婦をリラックスさせ、産後の抑鬱症を緩和させる。
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肌 |
細胞更新特性があり、特にヘアの成長を促進することにより頭皮の様々な障害を好転させる。皮脂の過剰生産を減らし、脂っぽいヘアをさっぱりとさせ、ふけをなくす。 |
■グレープフルーツ
主要作用:リモネン、クマリン
心 |
全般的な高揚効果、賦活効果があるので、ストレス状態にあるときに価値を発揮する。躁鬱症状を安定化させ、中枢神経系のバランスをとる。また、幸福感を与え、軽い催眠効果をあらわす。 |
身体 |
刺激作用により、リンパ系を刺激し、体液の流動化のプロセスをコントロールする。利尿作用は、肥満と体内の水分滞留の解消に効果をもたらし、むくみやセリュライトを好転させる。また、胆汁の分泌を刺激して脂肪の消化を促す。刺激作用により消化液の分泌が促されるので、食欲を増進させ、消化のバランスを取る。 |
■サイプレス
主要成分:α‐ピネン、σ‐カレン、セドロール
心 |
鎮静作用により、いらいらを鎮める。怒りを和らげる効果があり、これが精神を浄化し、心を閉ざしている障害物を取り除く。 |
身体 |
結合組織・呼吸器系粘膜の鬱血除去作用と静脈壁の弾力を回復させる作用があり、あらゆる静脈瘤の病気と痔疾、気管支炎、肺気腫に役立つ。また、前立腺の鬱血除去作用により、前立腺肥大や前立腺炎に効果を示す。鎮咳・粘膜溶解・抗痙攣作用により、鼻炎、百日咳、喘息のせいで生じる咳、風疹、水痘、流行性耳下腺炎に適用される。 自律神経の調節作用があり、更年期の自立神経障害、顔のほてり、不安定な精神状態からくる精神疲労を軽減する。また、卵巣の機能不全を正常にし、月経痛と重い月経を好転きせる効果もある。免疫能高進作用があり、高齢者、虚弱体質また感染を繰り返し患ったり、治療を長期間受けて疲労している人に役立つ。 |
肌 |
体液にたいしてバランスをよくする働きがある。水分の過度の喪失を抑制するので、衰えはじめた肌に有効である。汗をかきやすい脂性肌にも効果を示し、瘢痕形成作用により、創傷がよく治る。 |
■サンダルウッド
主要成分:β‐サンタロール、α‐サンタロール、酢酸サンティル、サンタレン
心 |
非常にリラックスさせ、神経の緊張と不安を和らげ、気分を鎮静させる。平和をもたらし、物事を受け入れるのを助ける作用がある。 |
身体 |
浄化・抗炎症作用により膀胱炎を好転させ、性尿路系にきわめて有益な作用を及ぼす。 |
肌 |
特に乾燥性湿疹、老化してきた肌および脱水肌に効果がある。肌を軟化させる働きがある。かゆみを抑え、炎症をひかせるのに有効であり、殺菌消毒特性があることから、にきび、腫脹、感染症をおこした創傷に効き目を発揮する。 |
■シダーウッド・アトラス
主用成分:β-ヒマカレン、α-ヒマカレン、アトラントン、γ-ヒマカレン
心 |
鎮静・緩和の両作用により、神経が緊張しているとき、不安にとりつかれた状態のときに非常に役立つ。 |
身体 |
内分泌系と神経系との双方に強壮作用を及ぼし、ホメオスタシスを整えて、体のバランスを回復させるのを助ける。メインとなる効果は、呼吸器にたいして発揮され、去痰作用により気管支炎、咳、カタルといった症状を軽減する。粘液の分泌の過多は、乾燥させる作用によって抑制される。性尿路への働きも重要で、膀胱炎のような障害を好転させる。また、腎臓にたいして強壮効果を示す。 |
肌 |
収斂と殺菌消毒との両方の特性があり、脂性肌に最高の効果を発揮する。にきびを治したり、痂皮、膿をとりのぞき、皮膚炎・乾癬のような慢性症状をきれいに治癒させたりする。よいヘアトニックになり、頭皮の脂漏、ふけ、脱毛症に効きめをあらわす。皮膚をソフトにする特性がある。 |
■ジャスミン
主用成分:酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、フィトール、ジャスモン
心 |
抑鬱、悲観的な気持ちを高揚させ、自信を与える。また、神経を鎮静させ、情緒にうるおいを与える。 |
身体 |
出産のときに価値を発揮し、子宮の収縮を強めて分娩を促し、同時に苦痛を和らげる。ホルモンバランスをとる力がすばらしく、産後の抑鬱症にも有効である。さらに母乳の出を促進する。また、子宮の痙縮を緩和させ、月経痛を和らげ、膣の感染症全般にも有益である。男性の生殖器系に対しては、精子の数を増加させることによって不妊症を改善させる。強力なリラックス特性があり、これがインポテンツ、早漏ならびに女性の冷感症のような性的な障害に効果をもたらす。
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肌 |
乾燥肌、敏感肌を特に鎮静させ、強壮にする働きを持つ。 |
■ゼラニウム
主用成分:シトロネロール、ゲラニオール、リナロール
心 |
神経系の強壮剤になり、不安と抑うつを鎮め、精神を明るく高揚させる。心のバランスをとりもどさせ、副腎皮質に対する作用を通してストレスを減少させる。 |
身体 |
ホルモン系の働きを正常にする機能があるため、月経前緊張症と、抑うつ症や膣からの分泌物の欠如や重い月経などといった更年期の各種の障害に役立つ。 |
肌 |
皮脂腺からの油脂の分泌のバランスをとるので、すべてのタイプの肌の状態に役に立つ。湿疹、やけど、帯状泡疹、砲疹、白疇、しもやけも、これに好反応を示す。また、機能が鈍化した肌、うっ滞を生した肌、脂性肌にもよく、肌全体の浄化剤になる。 血液の流れを改善し、色の冴えない肌の血色をよくする。 |
■ティートリー |
主要成分:テルピネンー4-ol、ν-テルピネン、ρ-シメン、1.8シネオール |
心 |
心をリフレッシュさせ、よみがえらせる。 |
身体 |
幅広い菌に有効な抗感染作用があり、特に大腸菌症・膀胱炎などの生殖器系感染症や、急性の下痢・食中毒などの腸の感染症の治療に著効がある。また、抗真菌作用により、カンジダ症や寄生虫症を好転させたり、抗ウイルス作用によりヘルペス、帯状疱疹に効果を示したりする。その他に、花粉症に著効がある。 |
肌 |
きわめて浄化力が強く、感染症をおこした創傷、おでき、よう(燦)の膿を減少させる。また、やけど、ただれ、日焼けのしすぎ、白鮮、いぼ、たむし、単純疱疹、水虫にも役立つ。頭皮の乾燥状態とふけにも有益である。 |
■ネロリ
主用成分:リナロール、リモネン、β-ピネン、ネロリドール
心 |
極度に興奮した状態の時、ヒステリーをおこした時、ショックを受けた時に気分を鎮める。 |
身体 |
交感神経系を鎮静させる作用があり、不眠症によい薬剤になる。特に、抑鬱症のために睡眠障害が生じているときに効果がある。また、神経痛、頭痛、眩暈にも役立つ。不安を鎮める効果があるので、性的な障害に有益で、有効な催淫剤になる。また、月経前緊張症と結びついた情緒的な不安を軽くしたり、いらいらや涙もろさといった更年期の症候のいくつかを好転させたりする。
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肌 |
著しい皮膚細胞成長促進特性があり、皮膚細胞の更新を助け、肌の弾力性を改善させる。乾燥肌、敏感肌、成熟しきった肌に最も有益である。特に毛細血管の破れ、癒痕、妊娠線にたいして効きめがある。 |
■バジル・スィート
主用成分:メチルカビコール、メチルオイゲノール、シトロネロール
心 |
自分が精神的に弱っていると感じたときに神経を強壮にする。そして、感覚を鋭敏にし、集中力を高める。ヒステリーと神経障害を鎮める一方で、抑鬱症にたいして高掲効果をあらわす。 |
身体 |
抗痙攣作用に著効があり、消化器系の痙攣痛、尿路結石、月経困難症に適応される。 また鎮痛作用にも著効があり、胃カタル、乗り物酔いに有効である。さらに、自律神経系の強壮・調整作用にも著効があり、悩みや不安が原因の痙攣に効果を示し、精神安定作用によりストレスによる精神的過労、強迫観念、不眠症、物忘れを軽減する。 副腎皮質に作用を及ぼし、アレルギーの発症を減少させる。
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肌 |
機能が不調で、うっ滞をおこした皮膚にたいしてリフレッシュ作用と強壮作用を発揮する。にきびをおきえるのにも役立つ。 |
■パチュリー
主要成分:パチュリアルコール、パチュレン
心 |
無気力感を払いのけ、現実にしっかり足をつかせ、客観的なものの見方が出来るようにする。 |
身体 |
強力な収斂特性、瘢痕形成特性にもとづく結束作用があるため、とくに過度のダイエットのために緩んでしまった皮膚をひきしめるのに役立つ。また、食欲を抑制する働きがある。さらに、これは下痢にも有効である。
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肌 |
皮膚の細胞の再成長と癒痕の形成を助ける組織再生剤といわれ、ひびが切れた皮膚、潰瘍、創傷を治す。にきび、湿疹、真菌感染症、頭皮の障害にも改善をもたらす。 |
■フランキンセンス
α-ピネン35%、パラシメン35%、リモネン10%
心 |
平静な感情をおこさせ、呼吸をスローダウンさせる。これによって、心に元気さを与え、和ませる効果をもたらす。 |
身体 |
粘膜に著効があり、特に肺を浄化するのに役立つ。また、呼吸にたいしてすばらしい効きめがあり、息切れを改善するので喘息患者に有益である。カタル症状に有効な薬剤になり、分泌を規則正しくする。鼻かぜを緩和させる効能があり、咳、気管支炎、喉頭炎の緩和剤になる。また、胃の苦痛を和らげ、消化を助け、消化不良をなおす。 |
肌 |
老化した肌に新たな活性を与え、しわをのばして目立たなくする。 皮膚のよい強壮剤となる。収斂作用により、皮脂の分泌のバランスを整えるのに役立つ。また、創傷、ただれ、潰瘍、よう(癒)、炎症にも効きめがある。 |
■ペパーミント
メントール40%、ν‐テルピネン20%メントン20%
心 |
冷却する性質があり、怒った時、ヒステリーをおこした時、神経性の振顫をおこした時に、それらの状態を好転させます。精神的な疲労と抑うつには卓効を示す。 |
身体 |
鎮痛作用によって、頭痛、副鼻腔炎を、抗炎症作用によって神経痛、歯痛、耳痛、胃痛、腸痛、筋肉痛を好転させる。 肝機能を促進し、消化不良や吐き気を軽減し、胆汁排出促進作用によって胃もたれ、食欲不振の改善し、胆汁分泌促進作用で胃と腸の無緊張症を治す。肝細胞再活性作用により、肝不全、ウイルス性肝炎による中毒性肝炎に効果的で、また肝硬変を安定化させる。また、制吐作用により、乗物酔い、つわりに有効である。 免疫能高進作用があり、呼吸器・耳鼻咽喉・消化器系などの感染症、帯状疱疹、ヘルペス、尿生殖器の感染症に効果的である。 |
肌 |
毒素のうっ滞をとりのぞくことによって、皮膚炎、白癬、疥癬、かい痒症にたいして役立つ。毛細血管を収縮させるため、冷却作用を発揮し、かゆみ、炎症、日やけのしすぎを和らげる。また、皮膚を軟化させ、にきびを取去り、脂性の肌と脂性のヘアとを美しくする。 |
■ベルガモット
酢酸リナリル40%、リモネン35%、ベルガプトン5%、リナロール15% ネロール10%
心 |
心を鎮静させるとともに高揚させる性質があり、不安症、抑うつ症、神経の緊張に効きめがある。冷却し、リフレッシュさせる特性があり、交感神経系の鎮静化により、怒りの気持とフラストレーションとを和らげる。 |
身体 |
泌尿管系のよい殺菌消毒剤となり、感染症と炎症、主に膀胱炎に有効である。また、消化管にも作用を及ぼし、消化不良、鼓脹、疝痛、不消化による胃痛、食欲喪失といった症状を和らげる。腸内組織変質防止剤、感染抑止剤として非常な効果を示し、腸のなかの寄生虫を駆除し、胆石を著しく減少させる。食欲を順調にする力もある。 |
肌 |
消毒作用と治癒作用があり、脂性肌に生じる湿疹、乾癬、にきび、疥癬、静脈瘤性潰瘍、創傷、疱疹、皮膚と頭皮との脂漏などの症状を、とりわけそれらがストレスと結びついている場合に、改善する。 |
■ユーカリ
ユーカリ・ラジアータの主用成分:1.8‐シネオール、α‐ピネン、β‐ピネン
ユーカリ・グロブルスの主用成分:1.8シネオール、α‐ピネン、グロブロール、リモネン
ユーカリ・レモンの主用成分:シトロネラール、酢酸シトロネリル、シトロネロール
ラジアータはグロブルスと比べると若干用途は狭まるが、呼吸器系、筋肉痛、感染症、頭痛、ストレスなどに有効である。グロブラスはラジアータ種よりも酸化物の含有量が高めで、もっとも用途の広いオイルとされる。レモンはアルデヒドとアルコール含有率が高い。パワフルな殺菌、抗炎症作用をもつ。水虫、フケなど肌のトラブル、筋肉痛に有効である。スキンケアには向かない。
心 |
情緒にたいして冷却作用を示す。また、頭脳を明晰にし、精神を集中するのを助ける。 |
身体 |
ラジアータ:抗炎症作用は、下気道に強く働く。去痰作用、粘液溶解作用、抗菌作用、鎮咳作用があり、気管支炎、ウイルス性あるいは細菌性気管支肺炎、肺炎、肺濃瘍に効果がある。また、抗痙攣作用のため呼吸を楽にし、肺のガス交換を活発にする。 その他には、利尿作用と腎臓保護作用がある。 グロブルス:耳鼻咽喉部の病気の著効を示し、抗カタル作用、去痰作用、抗ウイルス作用、強壮作用により、アレルギー性あるいは感染による鼻炎と副鼻腔炎を好転させる。 鎮痛作用、抗炎症作用、精神紅葉作用、鬱血除去作用があり、悪寒、風邪の初期症状、慢性疲労に適用される。 レモン:抗炎症作用や抗リウマチ性は特に泌尿器、生殖器に顕著に効果を示し、膀胱炎や生殖器系の感染症に適応される。抗ウイルス作用があり、帯状疱疹やヘルペスに効く。 鎮痛作用により、頚背部や手足の関節炎を緩和させる。膵臓機能調節作用により血糖値のバランスを保たせる。他に、鎮静作用、高血圧作用がある。 |
肌 |
疱疹のような発疹に効きめがある。また、やけどに有効で、細菌の増殖を防ぎ、膿の形成を抑制して、新しい組織ができるのを助ける。切り傷、各種の創傷、潰瘍、炎症もこれに好反応を示す。皮膚のうっ血もなおす。 |
■真正ラベンダー
主用成分:酢酸リナリル、リナロール、テルピネン-4-ol
心 |
抗神経障害作用により、怒りを和らげ、中枢神経のバランスを取る。精神を浄化し、緩和させる。また抗鬱作用があり、躁鬱症的な状態の時にその価値を発揮する。 |
身体 |
心臓の強壮剤となり、血液を流動化させ、高血圧を調整、動悸を和らげる。リンパの流れを促進し、水分滞留にも効果が見られる。鎮痛作用があり、筋肉の痙縮を治すのに有効である。これに関連して、捻挫、筋ちがい、リウマチ痛にも効きめがある。 |
肌 |
新しい細胞の成長を促すとともに皮脂の分泌のバランスをとる効果を示す作用があるため、大半の肌質に使える。また、やけどや日焼けのしすぎを治す。殺菌効果、瘢痕形成作用もあり、感染症の防止や外傷、ニキビ、湿疹、挫傷、毛細血管の決壊、腫瘍などにも役立つ。効果的なヘアトニックにもなる。 |
■レモン
主用成分:リモネン、β‐ピネン、サビネン、クマリン
心 |
心を落ち着かせリフレッシュさせる。頭の働きを明晰化し、記憶力、集中力を高める。 |
身体 |
強壮作用・浄血作用は赤血球と白血球を活性化させるので、貧血、免疫力の向上に役立つ。また、腎臓と肝臓の鬱血を除去する。循環器系に対して素晴らしい強壮剤になり、むくみ、静脈瘤、セリュライトなどに効果がある。血液の粘性を下げる作用があり、拡張蛇行静脈にかかる血圧を下げる。また、血糖値低下作用により糖尿病は好転し、止血作用は鼻血を止めるのに役立つ。 殺菌・消毒作用、解熱作用があり、咽喉炎や咳、流感を改善する。特に、発熱が伴う場合に有効である。制酸作用・抗リウマチ作用・抗神経痛作用により体の中の酸を中和させるので、リウマチ、痛風、関節炎に効果がある。また、頭痛、片頭痛、神経痛にも効果がある。 消化器系の機能を向上させ、体の酸性を中和し、胃のアルカリ性を高める。また、肝機能を高め、膵液の分泌を促進する。制吐作用は、乗り物酔いやつわりの吐き気を緩和する。殺菌作用・消毒作用・止痒作用があり、風邪、虫さされ、傷全般によい。 |
肌 |
死んだ皮膚細胞をとりさって、色の冴えない活気のない肌色を輝かせる。収斂作用により、破れた毛細血管を治し、脂っぽい肌とヘアとを効果的に洗浄する。皮膚軟化作用・腐食作用・抗硬化作用・瘢痕形成作用は、うおの目・いぼ・たこ・足の裏の角質を除去したり、痛みやすい爪を守ったりするのに役立つ。 |
■レモングラス
主用成分:ゲラ二アール、ネラール、シトロラール、リモネン
心 |
心を刺激し、生気を回復させエネルギーを充電する。精神を高揚させ、心の中のわだかまりを解き放たせる。 |
身体 |
消毒作用・殺菌作用があり、咽喉痛、喉頭炎、各種の熱病のような呼吸器の感染症に特に効果的である。 鎮痛作用・刺激作用・強壮作用により、筋肉痛・頭痛に効果を示す。乳酸を除去し体液循環を促進するので、筋肉の強壮や、足の疲労に有益である。健胃作用・駆風作用により疝痛、消化不良、胃腸炎に有益に働き、食欲促進、消化促進を促す。 また、デオドラント剤になり、ペットの体臭を予防する。また、虫を近づけないようにしたり、ペットの動物から害虫、ノミを追い払ったりするのに役立つ。 催乳作用があり、母乳の出を良くする。 |
肌 |
強壮作用・消毒作用・殺菌作用により、肌に張りを与え、ニキビを綺麗に治し皮脂のバランスをとる。また、開いた毛穴を引き締める働きもする。 殺真菌作用があり、各種感染症、水虫に効果がみられる。 |
■ローズ
主要成分:シトロネロール、ゲラニオール、ネロール
心 |
抑鬱、悲嘆、嫉妬、憎みといった感情をほぐし、心を明るく高揚させ、神経の緊張とストレスを和らげる。女性に自分自身に対する肯定的な感情を抱かせる。 |
身体 |
子宮強壮作用・通経作用があるため、子宮のきわめてよい強壮剤になる。ホルモンバランスを取り、月経前緊張症を鎮め、膣からの分泌を促し、月経周期を正常化させる。男性側の不妊症にも、精液を増加させる働きを通じて有益な効果をもたらす。催淫作用・抗鬱作用により、とくに冷感症とインポテンツをそれぞれ好転させる。 |
肌 |
特に老化肌、乾燥肌、硬化肌、敏感肌に効果があり、しみ、しわに効く。 強壮作用・消炎作用・止血作用があり、炎症を緩和させるのに有効で、また毛細血管が破れたときの治療に役立つ。 |
■ローズマリー
ローズマリー・カンファーの主用成分:α‐ピネン、カンフェン、カンファー、
1.8シネオール
ローズマリー・シネオールの主用成分:1.8シネオール、α‐ピネン、カンファー、
リモネン
カンファーは、一般的なエネルギー刺激作用。筋肉系・呼吸器系で利用価値が高い。刺激が強いので日常のスキンケアには向かない。シネオールは肺、肝臓、腎臓のトラブルを除去する。刺激は強くないのでスキンケアにも使え、初心者向きである。
心 |
脳細胞を活気づけ、頭脳を明断にして記憶力を増進させる。精神的な過労、頭脳の不活発全般、無気力に効果があり、心を元気づけ、強化する。 |
身体 |
筋肉痛などの肉体的な痛みを和らげる。特にカンファーが適している。 とても価値のある強心剤、心臓刺激剤で、低い血圧を正常値に上げる。また肺の強壮剤・予防剤にもなり、かぜ、喘息、慢性気管支炎に有効である。特に風邪の治りかけの頃はシネオールが適している。肝臓のうっ滞除去作用により、肝炎、肝硬変症、胆石、黄痘や胆管閉塞症にも効果がある。消化を促進し、消化不良、吐き気、下痢等の消化器官のトラブルにも効果を示す。 |
肌 |
強い収斂作用があり、たるんだ皮膚に有効なうえ、肌のうっ滞、むくみ、腫脹も好転させる。カンファーとシネオールは、特に脂性肌に有益である。フケ、育毛などヘアケアにも利用できる。 |
参考
技報堂出版 庄司菊雄著 においのはなし:アロマテラピー・精油・健康を科学する
フレグランスジャーナル社 ワンダー・セラー著 アロマテラピーのための84の精油
2.4 副作用
アロマテラピーでは植物の香りによって、副作用の心配なく症状を緩和できる、というのが一般的な理解であるが、エッセンシャルオイル(精油)の種類や使用法によってはさまざまな副作用―というよりはトラブルといった方が適切かもしれない―を引き起こす可能性がある。
2.4.1肌のトラブル
敏感肌、アレルギー体質の人など、人によっては特定のエッセンシャルオイルに反応し、痒み、痛み、腫れ、かぶれ等を起こす場合がある。特に、柑橘系・パイン系のオイルや、ユーカリ、ベルガモット、バジル、シナモン、クローブ等は注意が必要である。
たとえば、エッセンシャルオイルをお風呂に滴下してアロマバスを楽しむ場合には、エッセンシャルオイルはお風呂のお湯には溶けず、エッセンシャルオイル同士がくっつき合おうとし、更にエッセンシャルオイルの成分は肌の脂分と引き合うため、お湯の表面に集まったエッセンシャルオイルがそのまま肌につく、という状態が起きてしまう。先程あげたようなエッセンシャルオイルは非常に強い成分を含むため、直接肌につけるのは好ましくない。そのため、エッセンシャルオイルを直接お風呂に滴下する場合には、前もってパッチテスト(1%濃度で肌の敏感で目立たないところに少量つけて1時間ほど放置し反応を見る)をしておいた方が良いだろう。
また、光毒性といって、皮膚につけたエッセンシャルオイルの成分(フロクマリン)が紫外線に反応して、痒み、発赤、しみなどの色素沈着を生じることがある。このため、ベルガモット、レモン、ライム、グレープフルーツ、ビターオレンジ、アンジェリカ、バーベナなどのエッセンシャルオイルを外出前や外出時に日光に当たる部分へ使用するのは避けた方がよい。
2.4.2急性の症状―痙攣、発作、幻覚など
これらはエッセンシャルオイル中の毒性のある成分が引き起こすものである。ヒソップ、カンファー、ナツメグ、セージ、ローズマリー、フェンネルなどは、痙攣、発作、幻覚を引き起こす可能性があるため、子供やてんかんのある人、脳に障害のある人は避けるべきである。しかし、誤って大量に内服でもしない限り、濃度を守ってマッサージ等外用している分には、こういった急性症状が起こることはないため、過剰反応は禁物である。
2.4.3慢性の副作用的疾患―肝臓、腎臓への負担、ホルモンバランスの破壊など
たとえば、子宮内膜症、子宮筋腫、ホルモン依存型の疾患をもっている人は、クラリセージ、サイプレス、メリッサ、レモングラス、スイート・フェンネルの使用は避けた方がよい。これらのエッセンシャルオイルには、ホルモン様の働きをする成分が入っており、微妙なホルモンバランスを崩してしまう可能性があるためである。
また、緑内障の人はメリッサ、レモングラス(眼圧をあげる作用がある)の使用は避けた方がよい。使用する場合には、使用量、頻度に注意すべきである。
他にも、バジルは大量使用するとガンの原因になると言われるため、使用量、頻度に注意が必要である。
2.4.4妊娠中のトラブル
妊娠初期のエッセンシャルオイルの使用が流産の原因になる、とするセラピストもいるが、流産とアロマテラピーの関連性は完全に立証されているわけではない。しかし、一般的な注意として、妊娠中は濃度を1%まで落として使うことと、通経作用のあるオイルは避けること、というのがあげられる。セージ、マスタード、フェンネル、バジル、カンファー、ササフラス、ミルラ、ラベンダー、オレガノ、タイム、ウィンターグリーン、バーチ、クローブ、シナモンは妊娠中避けるべきものである。また、授乳期にはセージ、ガーリックは避けた方がよい。
しかし、エッセンシャルオイルが妊娠中に有効なこともある。たとえば、ペパーミントやジンジャーにはつわりを緩和する作用があるし、通経作用のあるジャスミン、ラベンダー、クラリセージなども、妊娠安定期以降に使用すれば、出産を楽にすることができる。
以上のように、アロマテラピーの副作用について述べてきたが、初めにも書いたように、アロマテラピーは、副作用が少ない、というのが特徴である。したがって、使用量や頻度を守って使いさえすれば安全であるし、精神面においても肉体面においても効果をもたらしてくれるはずである。さまざまなエッセンシャルオイルの性質を知って、うまくつきあいたいものである。
参考
http://www.e-conception.org/