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第3章 ~臨床応用~
3.1 産婦人科
妊娠中は胎児への影響と陣痛の誘発作用などの制約があり、精油の使用が制限されており、注意深い対応が求められる。これに比べて分娩・産褥に対しての制約は少なく、陣痛の誘発作用などは、むしろ積極的に応用すべきものと考えられている。
アロマテラピーの実施方法として、芳香浴、アロママッサージ、アロマバス(全身浴)、ハーブティーが一般的であるが、産科臨床では、患者の嗜好、同室患者への影響、医療従事者の負担や手間、時間的な制約などがあり、芳香浴、アロマバス、全身マッサージなどは実際的ではない。このため、アロマバスのうち足浴・座浴の部分浴、アロママッサージのうちアロマ・つぼマッサージ、温湿布、会陰マッサージなどの部分マッサージなどの部分マッサージが行われている。
産科臨床の対象例としては、以下のようなものがある。

 

妊娠中

①妊娠線の予防

②下肢浮腫の治療

③会陰マッサージ

 

 

 

 

 

分娩中

①陣痛に対する和痛、鎮痛

 ●アロマ・つぼマッサージ(腰部・臀部)

 ●恥骨上部の温湿布

②陣痛促進・誘発

 ●破水例

 ●微弱陣痛例

 ●分娩誘発の補助手段

 ●予定日超過例に対して

③胎児心拍数図の改善

 ●胎児刺激試験として利用

④会陰マッサージ

産褥

 

①会陰縫合部、脱肛の治療

②子宮復古の促進

ここでは主に分娩に対するアロマテラピーについて、詳しく述べたいと思う。

3.1.1陣痛に対する和痛・鎮痛
分娩中にアロマ・つぼマッサージ(腰部)、および恥骨上部の温湿布を行う。胎児心拍の改善がみられ、胎児刺激試験としての有用性が認められる。アロマ・つぼマッサージは、精油の経皮吸収による効果、およびつぼを指圧刺激することによる鎮痛を目的とする。また、分娩全期を通して恥骨上部の痛みを訴える産婦は少なくないので、精油を恥骨上部にすりこみ、蒸しタオルを当てて20〜30分温湿布する。
<処方例>クラリセージ3滴・ローズ3滴・イランイラン3滴をスイートアーモンドオイル30mlで希釈。

3.1.2 分娩誘発効果
前期破水、微弱陣痛、予定日超過などにより人工的な分娩誘発を必要とする奨励を対象に、足浴を行っている。
足浴による陣痛誘発の効果判定を著効・有効・無効に分けて判定すると、微弱陣痛・破水・分娩誘発の対象70例のうち、著効16例(23%)、有効22例(31%)、無効27例(39%)不明5例(7%)となった。また、予定日超過42例では、効果あり12例、効果なし30例となり、有効率29%を示し、メディカルアロマテラピーの医療現場での臨床応用に期待を抱かせる結果となった。(ただしここでは、著効とは、足浴中から陣痛が発来するか増強し、有効陣痛となって分娩に至った例をいい、有効とは、足浴中に腹緊があり、足浴後6時間以内に陣痛が発来するか増強し、分娩に至った例をいい、無効とは、足浴中や足浴後に陣痛が発来したものの有効陣痛とならず、分娩に至らなかった例をいう。)

3.2 内科と生活習慣病
感冒は咽頭痛や頭痛倦怠感など不快な症状を伴い、ほとんどの人が年に数回罹患する。感冒の患者にティートリー、ラバンサラ、ニアウリなどを3滴ずつ1日に3回服用してもらった結果は良好で、70%以上の有効率が得られた。感冒症状は3日以内に消失するので、4日以上続く場合は他の治療に変えることも考慮する必要がある。経口投与ができない症例は、ホホバオイルにこれら3者を5%に希釈したもので頸部、前胸部、背部をマッサージする。咳を伴ったり、小児の喘息様気管支炎の場合は、サイプレスやラベンダーを3~5%に希釈し前頸部、前胸部や背部にマッサージをする。また風邪の回復期にもかかわらず咳がしつこく残る場合がある。その場合、特に前頸部の筋群が硬くなり、しかもかなりの圧痛を伴う。そこでこの圧痛部位を中心に、その筋群全体にユーカリ・レモン、サイプレスをホホバオイルで5%に希釈し、1日5回以上マッサージをする。
21世紀に向け高齢者が増加し、長期臥床者も確実に増えてきている。それに付随する問題の1つに床ずれがある。この場合、白糖/ポビドンヨードやブクラデシンナトリウムなどが処方されていたが、一進一退だった。そこで抗菌作用、末梢循環改善、抗炎症鎮痛を目的にティートリー、レモン、ヘリクリサム、ペパーミントを使用したが、明らかな効果は認められなかった。次にニュージーランドで採れるマヌカハニー(マヌカという植物の蜂蜜)を1日に2回塗布したところ、1週間後より創傷は乾燥収縮し始めた。マヌカハニーは、ニュージーランドでは古来傷や火傷、風邪の咽頭通などに使用されてきている。

脳卒中、癌、心臓病は3大成人病と呼ばれ、昭和30年代以降これらの疾患による死亡率を減少させることに主眼を置いて、様々な施策が講じられてきた。これらの施策には相応の効果がみられ、脳卒中や癌の一部に死亡率の明らかな減少傾向が認められるようになってきた。しかし戦後の生活習慣の大きな変化の中で、新しいタイプの疾患が目立ち始め、これらがいわゆる3大成人病と並び、あるいは凌いで大きな問題となり始めている。健康に関連する生活習慣については、「肥満を防ぐこと、禁煙、適正な睡眠」と要約することができるだろう。肥満治療と禁煙に力を入れることにより高脂血症、高血圧症、糖尿病の治療薬の投与量を大幅に減量することができ、医療費の抑制にも貢献できたといえる。肥満治療では、「つい食べてしまう」ことや「つい運動をさぼってしまう」ことが問題となることが多く、とくに夕食後就寝前の食事は致命的となることが少なくない。こうした習慣に陥りがちな症例に、ラベンダーを携行し、数分間あるいはそれ以上吸入することを指導している。ラベンダーに含まれる成分(酢酸リナリルとリナノール)の鎮静作用により、比較的良好な結果が得られることが多くある。禁煙指導では、ニコチンガムやニコチンパッチの使用により、ニコチン依存に伴う諸症状をコントロールすることが容易になってきましたが、さらに「手持ち無沙汰なときに」ラベンダーの吸入を併用にすることにより、成功率がさらに高まっている。生活習慣病の予防に補足的に用いる手段としては、

①比較的に安価な費用でできること
②わざわざする、めんどうでないもの

が必須の条件となる。アロマテラピーは、これらの条件を満たすものであり、生活習慣病が大きな問題となる21世紀においては、ますますその重要性が高まってくるものと思われる。

3.3 皮膚科
皮膚科には白癬、皮膚カンジダ症、帯状疱疹、単純ヘルペス、アトピー性皮膚炎などの患者が訪れるが、その中でアトピー性皮膚炎が特に多くなっている。
アトピー性皮膚炎を悪化させる要因に細菌、カビ、ウイルスがあるが、それらを抑える対策として、現在ではイソジンや超酸化水による殺菌法、抗真菌剤の外用が試みられている。しかしアトピー性皮膚炎の多くはドライスキンで刺激に抵抗性が低く、皮膚に直接付ける消毒液や外用剤によってもしばしば炎症を起こしてしまうことがある。そのため、殺菌力が強く低刺激性であるティートリーはアトピー性皮膚炎のアロマテラピー補助療法として適していると考えられる。ティートリーはオーストラリアでは有名な植物で、フトモモ科に属しており、その葉から抽出されるハーバルな香りが特徴である。ティートリーの主成分はテルピネン-4-olで、これがウイルス、真菌、特にブドウ球菌に強く作用することで殺菌力を発揮する。ワセリンで2%に希釈したティートリーを患者の皮膚に塗布し、外用の前後に細菌培養を行ったところ黄色ブドウ球菌が著しく減少したという検査例もある。最近では、このティートリーを中心に、症状に合わせて真正ラベンダー(殺菌効果、鎮静作用)、ローズ・ロック(皮膚の赤みを抑える)、カモミール・ローマン(抗アレルギー作用)などをブレンドし、キャリアオイルにはホホバオイルやワセリンが用いられる。
下にアトピー性皮膚炎に主に用いられる精油とその効用を示す。

名称

効能

特徴

ティートリー

細菌やウイルス真菌に対する殺菌作用、免疫刺激による抵抗力上昇作用

クールで清涼感あふれる香り。強い殺菌効果を持ち、消臭効果にも優れる。風邪シーズンには入浴や吸入、キャリアオイルに希釈して首の側面や鎖骨の下のマッサージに有効。

真正ラベンダー

中枢神経系抑制効果(鎮静、抗痙攣)、抗感染症

アロマテラピーにおける代表的な精油。「万能精油」と言われるほど用途が多く、安全に使用できる。穏やかなフローラルの香りは、ストレスや緊張、不安を和らげ、気分を鎮静させる。中枢神経に働きかけて血圧を押し下げたり呼吸を整えるなどの効果もある。

カモミール・ジャーマン

抗アレルギー作用、抗炎症傷創治癒の促進

カモミールの精油の中にはアズレン(抗炎症成分)が含まれているが、カモミール・ジャーマンはこのアズレンを少し多く含有している。作用はカモミール・ローマンとほぼ同じだが、アズレンが多少多い分抗炎症作用が強い。

カモミール・ローマン

鎮静作用、抗痙攣作用

カモミールは心を落ち着かせる効果に非常に優れた精油で、ヨーロッパでは民間治療薬として何世紀も前から一般に親しまれてきた。子供にも安心して使用できる精油である。

3.4 整形外科
さらに最近では、整形外科においてもアロマセラピーが導入され始めている。下に整形外科で効果が期待されている精油とその効果を示す。

症状

精油

臨床で得られている効果

鎮痛

 

バジル

筋緊張を伴う疼痛に有効。

ウィンターグリーン

 

急性痛にも慢性痛にも有効。局所血流改善。

鎮痛、鎮静

ラベンダー

プチグレン

頸部マッサージは経鼻的にもリラックス効果大。

知覚麻酔作用

ペパーミント

頸性頭痛で嘔気を伴う例に著効。

自律神経調節作用

バジル

サイプレス

プチグレン

頸部マッサージは触れるということと、嗅覚からの吸収で相乗効果あり。

筋緊張緩和

ローズマリー・カンファー

頸肩腕症候群では施行直後より改善。外傷後急性期に使用可能。

下肢むくみ

サイプレス

ジュニパー

即効性あり。自覚症状の緩和もあり。

抗炎症作用

ウィンターグリーン

ユーカリ・レモン

急性炎症、慢性関節リウマチ、変形性膝関節症に有効。

コーチゾン作用

ヨーロッパアカマツ

強い炎症、慢性関節リウマチに使用。

抗不安作用

ラベンダー

プチグレン

ローズウッド

マジョラム

慢性病の精神的要素に対し加える。

3.5 心療内科・精神科

3.5.1心療内科について
心療内科とは心身症、すなわち「身体疾患の中でその発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態」を対象とする心身医学を基礎とした医療と定義されるが、最近では精神科の守備範囲と重なってきつつある。
昨今、研究面・理論面で充実していく一方、複雑化した社会の中で、心療内科では疾患を身体面・心理面・社会面から多因子的・相互作用的に理解していこうという方向性が一般的になってきている。実際の診療においては、他科との連携を重視し、西洋医学的なアプローチと東洋医学的なアプローチが、患者・病態・治療者・施設によって幅広く用いられている。そのアプローチのひとつとして、アロマテラピーが選択されることも多い。

3.5.2アロマテラピーの治療応用の実例
アロマテラピーは、漢方薬・カウンセリング・マクロビオティック・鍼灸などと同様に、投薬に対する補助療法として使われることが多い。対象となる疾患に共通する症状は「不安」である。
その効果は、においの感覚と正・負の結果とを連合させる学習効果によるものと考えられている。

対象疾患

治療例

うつに起因する頭痛・肩こり等

ペパーミント(鎮痛作用・リフレッシュ効果)

不安障害

マジョラムやラベンダー(抗不安薬の減量のため、心理療法と併用する)

強い精神的緊張に起因する頑固な肩こり

ラベンダーとイランイランの併用

感冒

ユーカリ(慢性疲労解消)

ラジアタ(慢性疲労解消)

ラバンサラ(精神安定・免疫力向上)

 

鼻閉などの症状に効く。予防薬としても上記のものは有用。

パニック障害

激しい不安があたかも発作のように突発的に起こり、続発性のうつ状態に陥る。急性期の薬物治療に続いて認知行動療法に導入する際、脱感作およびオペラント条件付けの補助手段としてアロマテラピーが用いられる。

重症頭部脱毛症

自立訓練療法にアロマテラピーが併用される。

慢性疼痛

脱力発作の発作時に投与される。

心的外傷後ストレス反応

交通事故後のフラッシュバックに対する恐怖感の治療で用いられた事例がある。

不眠症

サンダルウッド・パチュリー・没薬・ローズ・オリス・パインなどを調合した香りが睡眠薬の減量・中止に効果があるという報告がある。

以上のように、心療内科でアロマテラピーが治療に導入されるのは

1.精油で心身両面の症状を同時にケアできる
2.通常用いる薬剤の服用に監視患者のコンプライアンスが不良である
3.従来の治療に反応が十分でない
などの場合が多い。
例えばパニック障害の場合、患者には薬物に対しての院生感情も存在し、服薬コンプライアンスが不良になることがしばしばある。その際の補助療法としてアロマテラピーを用いることで、心理的パニックマネジメントがスムーズに行われることがある。

3.5.3問題点
現在、アロマテラピーを代表とする香りの応用についての医学的認知はほとんどない状況である。また実際の応用上作用においても、薬物治療に比べはるかに弱いので、アロマテラピーの精神治療上の効果を過信することは危険である。
アロマテラピーという香りを応用する治療でも精神療法がきわめて重要であり、前提として精神科医としての診断能力は必須である。アロマテラピーだけで治癒するような疾患が存在しないことを知った上で、適切に治療に応用していく必要があるだろう。

参考
メディカ出版 川端一永・鮫島浩二・小野村健太郎著 医療従事者のためのアロマセラピーハンドブック

不老不死への科学