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第1章 〜花粉症とは〜

1.1 花粉症の症状
花粉症は鼻と目の症状が主である。花粉の量が多くなると鼻と目の症状が重くなり、のどにもかゆみや痛みといった症状が出てくる。またアトピー性皮膚炎を合併している人は、皮膚症状の悪化も見られるようである。
具体的には、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、そして目のかゆみといったものが挙げられる。空気中を飛散している花粉が、まず鼻の粘膜や目に接触するために、こういった症状が現れるのである。以下では通常の風邪と比較しつつ花粉症の特徴を見ていきたいと思う。

1.1.1 くしゃみ
花粉症のくしゃみは連続して起こり、回数が多いのが特徴である。7~8回、あるいはそれ以上続くこともある。一方風邪のくしゃみは3~4回である。また日数に関しても、風邪はせいぜい3~4日間程度であるが、花粉症では花粉が飛んでいる間、数ヶ月にわたって続く。

1.1.2 鼻水
鼻水は水のようにサラサラしていて、いくらかんでも出てくる。そして、この状態が数日続くことになる。風邪の場合には、最初はサラサラした鼻水が出るが、徐々に粘性の高い鼻汁になり、最終的には膿のような色に変化していく。こうした変化がないのが花粉症の特徴である。

1.1.3 鼻づまり
花粉症の鼻づまりは強力で、ひどい場合には、両方の鼻が完全につまってしまい、全く鼻で息をすることができなくなってしまうことがある。
昼間に花粉を吸い込んで、夜になってから鼻づまりがひどくなることが多く、そのため睡眠不足になってしまうケースも少なくない。どうしても口で呼吸をするようになるため、二次的な症状として、のどの乾燥や痛みなども生じてくる。また、鼻づまりのために集中力がなくなり、仕事や勉強に支障をきたすことさえある。

1.1.4 目のかゆみ
花粉が眼球やまぶたに付着することにより、涙が出たり、強いかゆみが生じたりする。眼球結膜も腫れぼったくなり、ひどくなると眼球結膜がむくんだようにブヨブヨになったり、まぶたが腫れて目が開かなくなったりすることもある。
またあまりのかゆさに目をこすってしまうため、結膜や角膜を傷つけてしまう人もいる。こうなると、目がゴロゴロする、痛みがある、まぶしさを感じる、目がかすむ、といった症状が出てくるようになる。

1.1.5 その他
花粉症では、前述の鼻や目の症状以外にも多様な症状が現れてくる。例えば、のど、気管、皮膚、耳、消化器などである。
吸い込んだ花粉がのどの粘膜に付着し、かゆみを起こす。鼻水や鼻づまりのために口で呼吸することが多くなり、口からのどへと花粉が入りやすくなっているのである。さらに、のどを経て気管にまで花粉が入ると、咳の発作が起きることもある。痰の出ない咳が続くのが特徴である。また、直接花粉による症状ではないが、鼻づまりのために口で呼吸をするようになると、のどが乾燥して痛くなるということもある。

露出している皮膚、特に花粉がたくさん付着する首から上に肌荒れが起きる。付着した花粉は少しずつ皮膚の内部に入り込んでいき、肌荒れの原因となるのである。具体的には化粧ののりが悪くなる、顔が赤く腫れぼったくなる、顔がほてる、といった症状が出てくる。

耳のかゆみが起きることもある。これは、外耳道の皮膚に花粉が付着してかゆみを起こすこともあるし、また、鼻から入った花粉が鼻と耳をつないでいる耳管の入口付近に付着し、かゆみの感覚が耳の方に放散して起こることもある。
口の中に入った花粉を、唾液などと一緒に飲み込んでしまい、胃や腸などの消化器官がアレルギー反応を起こすもので、消化不良や食欲不振を引き起こしてしまう場合がある。
以上は、花粉が直接の引き金となって起きる局所的なアレルギー症状であるが、頭が重い、だるい、イライラするというような全身症状に苦しんでいる人も多い。

1.2 花粉の種類
花粉症の原因となる植物は、ほとんどは花粉が風によって運ばれる風媒花である。花粉症は花粉によって起こる病気であるから、その地方にどんな植物が生えているのかによって、原因となる植物も違ってくる。日本では、花粉症といえば圧倒的にスギによる花粉症が多く、花粉症全体の約八割を占めている。世界中でもそうなのかというと、決してそんなことはなく、アメリカでは、キク科の雑草であるブタクサが原因となるブタクサ花粉症が圧倒的で、イギリスでは、イネ科の牧草や雑草による花粉症が中心になっている。

日本列島は南北に長くのびており、植物相が変化に富み、さまざまな種類の植物が生えている。その中には花粉症を引き起こす植物もたくさん含まれているのである。2003年の時点で、花粉症の原因植物として報告されているものだけで、60種類ほどにものぼる。その原因植物を分類すると次のようになる。

@樹木
スギ、ヒノキ、シラカンバ、ヤシャブシ、ハンノキ、など。
Aイネ科
カモガヤ、オオアワガエリ、ホソムギ、ハルガヤ、など。
Bイネ科以外
ブタクサ、オオブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、など。
それぞれの花粉の飛散期は異なっており、花粉症になった季節によって、原因になる花粉が推定できる。

飛散時期

図さまざまな植物の花粉カレンダー
http://takeda-kenko.jp/kirakira/vol16/kahun03.htmlより

花粉が飛散するのは、その植物の花が開いている時期に限られる。これがいわゆる花粉シーズンで、花粉症が現れるのもこの時期に限られる。そして、原因花粉の開花期がいつであるかによって、花粉のシーズンも違ってくるのである。

一般に、2月から6月にかけては、スギをはじめ、ヒノキ、シラカンバ、ハンノキといった樹木の花粉のシーズンで、5月から8月は、カモガヤ、オオアワガエリなどイネ科植物の開花期になる。また、8月から9月には、ブタクサ、オオブタクサが、8月から10月にはヨモギが花粉を飛ばすことになる。

以下ではいくつか具体的に取り上げてみる。
@樹木による花粉症
スギ
花粉の飛散は2月初旬に九州地方から始まり、4月にかけて次第に北上していく。戦後の住宅需要や治水の目的で全国に花粉を多く飛ばすスギが植えられたのが花粉症増加の一つの原因だと考えられている。



ヒノキ
スギよりも約1ヶ月遅れて3月から5月にかけて飛散する。関東では、スギ花粉が下火になる3月末から飛散し始め、4月にピークを迎える。スギ花粉の発症者はヒノキの花粉でも発症しやすく、逆にヒノキ花粉単独での発症は極めて少ないとされる。

ハンノキ
スギほど目立たないが、1月下旬から4月にかけて花粉を飛散させる。原野の湿地に多く見られ、日本全国に生えているが、特に北海道に多くの種類が見られる。

シラカンバ
4月から6月にかけて花粉を飛散させ、北海道に多く見られる。

Aイネ科植物による花粉症
スギに次いで発症者の多いのがこのイネ科植物による花粉症である。スギ花粉が治まりかけた4月から5月に飛散を開始し、8月まで続く。

Bその他の雑草による花粉症
ブタクサ
8月から10月にかけて花粉を飛散させ、代表的な秋の花粉症の一つである。全国にわたって分布しているが、あまり広い範囲には花粉を飛ばさない。

ヨモギ
キク科の植物である。ブタクサよりも強く作用し、患者数も増加している。やはり8月から10月にかけて飛散する。

カナムグラ
クワ科の植物で抗原性が強く、注意が必要なつる草である。全国の緑地のほか、その辺りの道端にもよく生えている。8月から11月に花粉を飛散させる。

各写真はhttp://www.bayer.co.jp/byl/kafun/left_1_1.htmlより。


1.3 原因

1.3.1 花粉症の発生機序(感作の成立まで)
人間の体は、体内に入った病原体や異物を認識し、除去するための免疫機能が存在する。その作用の過程でリンパ球が活性化することにより、抗原に抵抗する物質である様々な種類の抗体(IgM,IgG,IgA,IgEなど)が産生される。抗原となる物質にはリンパ球を刺激して抗体を作らせる部分(エピトープ)を幾つかもっていて、この部分に対応した抗体が作られる。これらの抗体は、他のエピトープとは反応しない。もちろん他の花粉抗原物質には反応しない(特異的)ため、鍵と鍵穴の意味を含めて特異的抗体と呼ばれる。

このうち花粉アレルギーを起こすのはIgE抗体である。IgE抗体の生理的な機能(体にとってよいはたらき)については不明な点が多い。何故花粉のような無害な物質にまでIgE抗体を作り出すのかは良く分かっていない。
それでは、現在までに確認されている発症に至るまでの機序を、時系列に沿って取り上げる。

(1)鼻粘膜への抗原の付着
まず花粉が鼻腔に侵入し、鼻粘膜の表面の粘液層に付着することから始まる。粘液層に付着した花粉からは、抗原が溶け出してくる。抗原は蛋白質などから構成され、水溶性がある。

(2)マクロファージ(抗原提示細胞)の抗原喰食
抗原はこれを異物と認識したマクロファージ(単球から分化した細胞)に取り込まれ(喰食)、一部が分解された後、主要組織適合性抗原(HLA抗原)と結合して抗原ペプチドの形で細胞膜の表面に提示される。これをT細胞の受容体(TCR)が認識する。

(3)T細胞の分化、活性化
T細胞は1型ヘルパーT細胞へと分化し、さらに抗原提示細胞が放出するインターロイキン1によって活性化して2型ヘルパーT細胞になると考えられる。
このとき活性化された1型へルパーT細胞は、さらにインターロイキン2を分泌してT細胞自身の増殖、分化にはたらく。同時にB細胞を増殖、分化させる因子も出す。抗原提示細胞の表面に提示された抗原ペプチドは、T細胞の受容体が認識して活性化され、インターロイキン4を産生遊離する。

(4)B細胞からのIgE抗体の産生
B細胞は、すでに抗原提示細胞で提示された抗原ペプチドによって活性化されている。これに2型ヘルパーT細胞から放出されたインターロイキン6が働いて抗体産生細胞に変化し、さらに、インターロイキン4とインターロイキン13によってIgE抗体を産生する細胞に分化する。
こうして生み出された特異的IgE抗体は、鼻や目などの粘膜に含まれている肥満細胞(マスト細胞)や好塩基球の細胞膜のIgE受容体(イプシロンレセプター)に固着する。(感作の成立)肥満細胞は皮膚などの結合組織に多く含まれる。

1.3.2即時相反応と遅発相反応
花粉症は、アレルギーの分類では1型アレルギー(発症にIgE抗体が関与する)に相当する。1型アレルギーの特徴は抗原との接触(抗原抗体反応)からアレルギー反応のピークが15分くらいまでの間に起こる(即時反応)ので、即時型アレルギーとも呼ばれていたが、近年もう一つの重要な現象を引き起こすことが分かってきた。
それは、抗原抗体反応から数時間して起こるので遅発相反応と呼ばれる。
即時相反応はIgE抗体と抗原との接触後、数秒から15分で発作性、反復性のくしゃみ、水様鼻漏、鼻閉がピークに達する。
一方遅発相反応は抗原との接触から7時間から8時間を経過して、鼻閉が起こる。

*即時相反応の過程
(1)抗原抗体反応
鼻の粘膜、目の結膜や皮膚の肥満細胞に結合しているIgE抗体と新たに吸入された花粉抗原とが反応して抗原抗体反応を起こす。このとき抗原はアレルギーの原因となる物質=アレルゲンと呼ばれる。

(2)ケミカルメディエーターの遊離
このIgE抗体とアレルゲンの反応が引き金になって、肥満細胞内に貯えられたヒスタミンという化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が遊離される。またこのとき、細胞膜の脂質から産生されるロイトコリエン、血小板活性化因子、トロンボキサンA2などのメディエーターも放出される。

(3)くしゃみ、鼻漏の発現
遊離されたメディエーターのうち、即時相反応の中心はヒスタミンである。ヒスタミンが知覚神経のH1受容体を刺激すると、発作性、反復性のくしゃみが出る。
また、知覚神経の刺激は、神経反射によって副交感神経を興奮させる。鼻の粘膜にいたった副交感神経の興奮は、アセチルコリンを分泌し、これが鼻腺に作用して水様鼻漏を出現させる。

(4)鼻閉の発現
同時にヒスタミンは鼻粘膜の血管にも作用する。血管のH1受容体を介して、血管を拡張させ、さらに血管の透過性を亢進して内部の水分を漏出させる。これが鼻閉を引き起こす。さらに、抗原抗体反応の際、肥満細胞からヒスタミンとともに遊離されたロイコトリエンのうちのロイトコリエンC4や血小板活性化因子、トロボキサンA2などメディエーターも血管に作用して鼻閉を増強する。この時点での鼻閉は、まだそれほどひどくなく、短時間で回復される。

*遅発相反応の過程
(1)好酸球の局所滲潤とロイトコリエンの産生
抗原抗体反応において、肥満細胞やリンパ球がインターロイキンを放出するが、このうちインターロイキン5は好酸球を局所に集める働きがあるとされている。抗原抗体反応から7時間から8時間して粘膜に集まり出した好酸球は、ロイトコリエンを遊離させる。強力な血管拡張作用、血管透過性亢進作用、平滑筋収縮作用などを有し、炎症に深く関わる。
(2)他の炎症細胞
このとき他の好中球、マクロファージなども同様に粘膜局所に滲潤し、ケミカルメディエーターを遊離して炎症反応に参加する。
好酸球を含めこれらを炎症細胞と総称するが、このうち遅発相反応においては好酸球が最も大きな役割を果たす。

(3)鼻閉の発現
こうした過程によって鼻閉が引き起こされるが、この作用による鼻閉は、即時相反応の場合と違って、長く続く。

(4)症状の慢性化
さらに好酸球は各種の顆粒蛋白を放出するが、これらは細胞障害性を持ち、粘膜の上皮細胞を障害して粘膜の過敏性が高まり、花粉以外のタバコの煙や冷気などの刺激でも症状が起こることになる。

花粉症の症状は常に抗原に曝されることにより、こうした即時相反応と遅発性反応が繰り返し時間差でおき、放置すると粘膜が不可逆性の変化を起こして慢性化する。

参考文献・サイト(第1章)
・久松建一,牧野荘平:『花粉症ここまでわかった!ここまで治る!!―専門医が語る治療と研究の最前線』:北隆館:2001
・斎藤洋三:『新編花粉症の最新治療』:主婦と生活社:2003
・大塚灯博邦:『専門のお医者さんが語るQ&A花粉症』:保健同人社:1999
http://www.kyowa.co.jp/kahun/qa/index.htm(花粉症ナビ*協和発行工業株式会社)
http://www.allergy-i.jp/kafun/column/column01.html
(アレルギー花粉症対策アペンティス)
http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/html/001.html
(花粉症保健指導マニュアル環境省)
http://www.e-chiken.com/shikkan/kahun.htm(花粉症メディカルヴィタ)
http://takeda-kenko.jp/kirakira/vol16/kahun03.html
(花粉症の予防と治療武田薬品工業株式会社)

不老不死への科学