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第7章 〜皮膚病と漢方薬〜

7.1 概要
 人間の皮膚は様々な生理的機能をもっており、対外保護作用、体内保護作用、分泌排泄作用、知覚作用、呼吸作用、角生作用などがある。皮脂腺のあぶらと汗腺の汗から成る脂肪膜が皮膚の表面を滑らかにし、潤いが保たれている。また、汗腺が老廃物や余分な水分の排泄をし、体温調節になくてはならないものである。西洋医学では皮膚の機能に異常が現れることによって、皮膚病が発生すると考えられている。皮膚が荒れる原因は表面の脂肪膜が薄くなることである。皮膚の異常は分泌排泄作用や体温調節作用を乱しているわけである。皮膚疾患の範囲が膨大である。主なものは皮膚炎(アトピー)、湿疹、蕁麻疹、掌蹠膿疱症、水疱症、角化症、乾癬、頑癬、カンジダ性皮膚炎などである。また、皮膚はアレルギーと関係がある対内保護作用を示し、正常機能が乱れれば、接触性皮膚炎や蕁麻疹、中毒疹などが発生し得る。

 皮膚疾患が起こる原因がはっきり区別できないものが多い。原因が特定できたとしても、細菌性のもの以外はそれを根本的に治療する方法はない。対症療法として、副腎皮質ホルモン(コルチゾール類)の外用、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の応用が挙げられる。そして、補助的にビタミンA(粘膜の成長促進)などのビタミン剤や肝庇護剤を利用するしかない。

 一方、漢方では「皮膚は内臓の鏡である」といわれている。内臓の働きの亢進や抑制により、内臓の相互バランスが崩れる恐れがある。その結果、皮膚に何らかの形で反応が現れると考えられている。したがって、内臓機能の異常を調整すれば、皮膚病を根本的に治癒することができる。漢方では皮膚病が現れる原因を次の3つに分けることが出来る。一つの原因だけで発症することは少なく、幾つかのものが重なって発症することが多い。

(1) 外因:風・寒・湿・暑・火・燥を「六淫の邪」と表現している。気候の急速な変化に皮膚が適応できなくなる際、皮膚病が発生するわけである。
(2) 内因:人間には七つの感情(七情)があり、それによって内臓に傷がつけられると信念されている(内傷七情)。内臓の働きにおける異常が皮膚病として反映されるわけである。
  七情 → 怒    驚    喜    悲    思    恐    愛
  五臓 → 肝火   肝血虚  心火   心血虚  脾気虚  腎虚   −
(3) 不内外因:食生活のアンバランス(飲食不節)により、脾肺両虚と腎虚が起こり、皮膚病が発生するわけである。食生活を混乱させる因子のことは不内外因子と呼ばれている。(例:過飲酒→火を生じ、陰液の血や津液を消灼すること;過飲茶水→湿を生じ、飲が停滞すること;五辛過食→気血を損なうこと;飢餓→脾胃を傷めること;膏梁厚味の酒、肉、刺激物を一緒に食べる→火毒が生じること;野菜過食→胃気不足、気血虚など)。

(1) 人体上部(頭面、頸項、上肢など身体上部)に発生する皮膚病の場合:風性が上行するので、風湿や風熱によって引き起こされることが多い。治療法:辛涼解表
   代表方剤:十味敗毒湯、人参敗毒散、消風散、治頭ソウ一方など
(2) 人体中部(胸、腹、腰、背など身体中部)に発生する皮膚病の場合:気鬱や火鬱によって引き起こされることが多い。気や火は中焦において発生するものだからである。 
   代表方剤:火鬱…黄連解毒湯、犀角地黄湯、温清飲
       :気鬱…白虎加人参湯、化斑湯、加味逍遥散など
(3)人体下部(臀、腿、脛、足など身体下部)に発生する場合:寒湿、湿熱によって、引き起こされることが多い。湿性が下につく性質があるからである。
   代表方剤:湿熱…越婢加ホ湯、当帰セン痛湯、三妙散
       :寒湿…カツ香正気散

しかし、全身に発生する皮膚病もあり、他の病気と重なることもある。病気の経絡に参考しながら、弁証や方剤を選択するべきである。

7.2 皮膚疾患の漢方治療法
 皮膚病の治療法には汗法(敗毒法)、清法(解毒法)、補法(血虚を補う、陽虚を補う)の3つがある。皮膚病に現れる証には@風証A熱証B湿証C血虚による風燥証D血熱による血燥証E於血証F寒証がある。

7.2.1 風証
 皮膚病で風証とは「掻痒」と「皮疹の拡大傾向」である。風証を除くのはキョ風薬を配合する。
キョ風薬:防風、牛蒡子、キョウ活、タン退、ケイカイ、薄荷、シツリ子、桂枝、麻
黄、桜皮

7.2.2 熱証
 熱証とは炎症である。皮疹が充血して赤く、触れて熱く感じるのは熱証である。
 清熱の薬物とは、抗炎症性薬物である。
  清熱燥湿薬…黄連、黄ゴン、黄柏、竜胆、苦参
  清熱涼血薬…犀角、生甘草、地骨皮、牡丹皮、玄参
  清熱潟火薬…知母、石膏など
  清熱解毒薬…金銀花、連翅、紫根、忍冬、白頭翁、山帰来
 清熱涼血薬は血分の熱を清潔にすることに使う。血分の熱とは真陰が傷まれ血が消耗される、血が動くなどの証候が特長であり、熱が高い。特に夜間に熱が高くなり、痒みが激しくなる。斑疹は紫赤色で、舌質疹は深紅色小暗紫色である。
 清熱潟火薬は気分の熱を清潔にする為に使う。気分の熱とは、汗をかく、口が渇く、顔が赤い、呼吸があらい、小便は赤味を帯びた黄色で少ない、舌苔は黄色であること。熱が肺、胃に結集する時に生じる。斑疹は鮮紅色である。
 清熱解毒薬は炎症があり、かつ化膿性傾向がある時に使用される。

7.2.3 湿証
 皮膚病における湿証とは、湿潤傾向である。浮腫、漿液性丘疹、水疱、ビラン面から湿証と判断する。
 利湿薬…蒼ホ・木通・車前子・滑石・沢潟・防巳・ヒカイ・ヨクイ仁・インチンコウ
 キョ風湿薬…蒼茸子・地膚子・白鮮皮
1. 当帰セン痛湯(風湿熱)―キョ風燥湿、清熱扶正;下半身の汚い湿疹に使用する事が多い。通風の特効薬。
2. 越婢加ホ湯(湿熱)−止汗、清熱退腫;下半身と上半身に利用される。作用は1.と同様。
3. 三妙散(湿熱)−清熱利湿、湿熱下注;黄柏、蒼ホ、牛膝からなり、下半身に使用される。
4. 竜胆潟肝湯(湿熱)−潟肝経湿熱;陰嚢湿疹、インキン、肛門周囲炎などすべて肝経の湿熱に利用。胆経に出た湿疹にも使う。
5. カツ香正気散(表寒を伴う湿困脾胃)−解表化湿、健脾;寒冷性蕁麻疹やアトピー性皮膚炎の一部に使用されることがある。

7.2.4 血虚による血燥の証
 血虚がお年寄りの皮膚によく見られるわけである。皮膚が萎縮し、皮脂が少なくなり、皮膚に潤いがなく乾燥している状態で、痒みが生じる。それを「血虚生風」という。
 燥証には潤燥薬が効いている…当帰、地黄、胡麻、何首烏、麦門冬、天門冬、瓜呂根
(1) 当帰飲子(血虚、燥風)― 潤燥燥風;老人性皮膚掻痒症や小児乾燥型湿疹
(2) 滋燥養栄湯(燥、血虚、風熱)―養血潤燥、清熱ソク風;角化性皮膚炎(主婦湿疹、足蹠)、乾性水虫― 一般的に手足に利用される。
(3) 温経湯(血虚燥冷)―温経散寒、活血化オ;口唇炎、手掌角皮症
(4) 麻杏ヨク甘湯(血虚、燥、風湿)― キョ風湿、潤燥;汗をかいているところに風が当たり、部位が冷えているので、皮膚の表面は血虚して燥になっている場合

7.2.5 血熱による血燥
 真皮には増殖性炎症があり、乳頭が肥大して角化異常が起きる。表面が厚く鱗屑が現れる。皮膚が乾燥し、内部には発赤、充血して肥厚がある。
(1) 黄連阿膠湯(血熱燥)―清熱潤燥;日光皮膚炎、化粧品カブレ、酒査様皮膚炎
(2) 三物黄ゴン湯(血熱燥)―清熱涼血;水虫、主婦湿疹、掌蹠膿疱症

7.2.6 於血の証
 皮膚病に於いては、色素沈着、紫斑、皮疹の固定化がみられる。活血キョオ薬配
合。
  活血キョオ薬:桃仁・紅花・三稜・莪ホ、牛膝、蘇木、穿山甲、虻虫・ジャ虫・虎杖
(1) 活血潤燥生津場(於血、血虚、燥)―活血潤燥;産後の皮膚病に利用
(2) 大黄ジャ虫丸(於血、燥)―破血ツイオ;尋常性魚鱗癬に使用。
(3) 紫根牡トチ湯(於血、熱毒)―清熱解読、補血;悪性腫瘍、悪性皮膚病、黒肉腫、頑癬、悪瘡に対して利用される。

7.2.7 寒証(陰症)
 キョ寒薬…肉桂、附子、肉シュ蓉、杜仲
(1) 十四味建中湯(寒、気虚、血虚)―温陽養血;寒冷性ジンマ疹に対して利用される。
(2) 楽令建中湯(寒、気虚、血虚)―補脾養血;寒冷性ジンマ疹、人工ジンマ疹の場合
(3) 黄ロウ建中湯(脾肺虚寒)―補気固表、温中補虚;単方で利用されることは少ない。温清飲との合方利用。

7.3 アトピー性皮膚炎と漢方治療薬
 アトピー性皮膚炎が遺伝素因として受け継がれ、終生にわたりその素因を保持している先天性過敏症である。家族性遺伝が50%の割合を占めている。乳児期に乳児湿疹という形態を呈している。幼小児期に痒疹型または関節窩に限局した類苔癬型として現れている。思春期、成人期に屈側に限局した苔癬型の丘疹となっている。アトピー性皮膚には幾つかの特徴がある。皮脂量が減少し、アルカリ中和能低下が観測され、発汗減退、末梢血管収縮など皮膚機能の異常が見られるわけである。また、皮膚が乾燥し、蒼白貧血性を示し、躯幹や肩、臀部などには毛孔性角化、掻痕が区別できる。
 アトピー発症の原因として、@遺伝素因 A飲食不節 B気鬱 が挙げられる。

(1) 遺伝素因:
 五臓の虚について考えなければならない。脾虚があれば、水殻の運化、益気生血、統血することなどが十分できなくなっている。肝虚の場合、血を蔵したり、自律神経系の正常な働きが阻害されたりしている。肺虚や汗腺分泌の異常によっても、アトピー性皮膚炎が生じているわけである。

(2) 飲食不節:
偏食など食事のアンバランス、インスタント食品、ジュース多飲、砂糖、野菜不足、カルシウム不足、食品添加物などは後天的に脾や肺、肝を傷み、アトピー性皮膚炎発生となっているので、的確な食事指導が必要である。

(3) 気鬱:
親が幼い頃の子供に精神的なストレスを与えていれば、気血の流れが悪くなり、子供が鬱病になりやすい。その結果、アトピー性皮膚炎も現れかねないわけである。
 アトピー性皮膚炎に利用される漢方薬は本治方(体質改善)と標治方(症状改善)という治療方針に沿って組み合わせ、構成される。次のような処方が存在している。

(1) 補中益気湯:脾肺両虚を改善させる薬。本治方薬。乳幼児の場合。
(2) 苓桂ホ甘湯:寒飲内停(体に悪水が停滞して冷えている)性アトピーの治療に役立っている。
(3) 消風散:風(痒み、拡大傾向)と赤い炎症、皮膚の余分な湿を取り除き、皮膚に必要な水分(津液)を補う働きがある薬。
(4) 温清飲:血熱を下げる際に使用される。血熱によって、血管が破裂しかねないので、真皮の部分が赤くなってから、適応されている。
(5) 治頭瘡一方:血熱が長い間停滞すれば、毒熱になり、化膿傾向がある。皮疹の粒が小さくなり、黒褐色になることは治療の目標である。
(6) 防風通聖散:熱を下がりながら、風を取り除く。アトピーが丘状に盛り上がっている際に利用される。
(7) 越婢加求湯:皮膚の湿気が多いときに利用される。「宣肺利水」という働きで皮膚からの余分な水分を蒸発させ、その気化熱で皮膚の表面を冷やす作用を示している。また、利尿作用をもっているわけである。
(8) 当帰飲子:秋になると皮膚が徐々に乾燥し、いわゆる「血虚風燥」という状態になった時に役に立っている薬。
(9) 三物黄ゴン湯:血虚、津液が枯渇した際、熱が出た際に利用される。
(10) 加減一陰煎:血虚、津液の不足促進によって、陰虚になった時に使用される薬。アトピー性皮膚炎が最終段階(皮膚の乾燥、色素沈着、皮膚が皺状になること)まで辿り着いた際に役立っている薬。