×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

第2章 ~ビジネスとしての健康食品~

年々高まる健康ブームを受けて、健康食品市場は急速に拡大している。この章では、健康食品ビジネスに着目し、わが国における健康食品の市場、開発、利用実態について述べ、また外国との比較をする。

2.1 健康食品の市場と開発

2.1.1 市場規模
わが国における健康食品市場は図2-1のように年々拡大の傾向を見せていて、2004年度には前年度比12%増の1兆2300億円となると推定されている。医薬品の売上高が8兆3千億円(厚生労働白書)であることと比べると小さなものだが、市場の拡大は今後も続くと見られていて、食品業界はもとより製薬・化粧品・その他様々な産業界からの参入が続いている。この背景には、生活習慣病の増加・超高齢化社会への突入・医療費の自己負担増・それにともなう予防意識の高まりなどいくつかの要因がある。

先に行なわれた栄養改善学会では、多くの国民が健康食品を利用している実態が多数報告されている。報告では、多くの国民が健康に不安を持ち、疾病の予防や健康増進にかつてない大きな関心を寄せていることが示されている。各種の栄養調査で高齢単身者の栄養欠乏や若年層の欠食の問題が指摘されていて、これまで行政は食事や食生活の改善を呼びかけている。しかしサプリメントなどの健康食品には触れておらず、健康について危機意識を持った消費者の自己防衛として利用が広がっているといえる。健康食品の利用実態については、2.2でさらに詳しく述べる。























2.1.2 売れ筋商品
健康産業新聞が04年度12薬局・薬店、専門店など100店舗を対象に健康食品の売れ筋調査をしたところ表2-1のような結果になった。健康酢は一昨年からテレビでたびたび紹介されており、高い水準で安定した商品となっている。コエンザイムQ10はテレビ放送をきっかけに大ヒットしたもので、品薄状態が続いている。
表2-1 2004年度 薬系・食系の売れ筋素材


 

薬系売れ筋素材

食系売れ筋素材

1

健康酢

コエンザイムQ10

2

コエンザイムQ10

青汁

3

アミノ酸

健康茶

4

ウコン

梅肉エキス

5

ヒアルロン酸

雑穀

6

ブルーベリー

ローヤルゼリー

7

クロレラ

ブルーベリー

8

コラーゲン

グルコサミン

9

グルコサミン

プロポリス

10

アガリクス

乳酸菌、コラーゲン

2.1.3 開発プロセス
健康食品は大きく分けて、素材探索、機能評価、商品化、製造の4段階(特定保健用食品の場合は審査を加えて5段階)を経て商品開発される。機能評価という工程がある点で、健康食品の開発は一般の食品開発とは異なる。健康食品の開発プロセスの各段階について以下、簡潔に述べる。

健康食品の開発プロセスは、まず、健康食品の原料となるような、健康機能をもつ素材を探す素材探索から始まる。健康食品メーカーは、素材探索を自社で行うものと、2.1.5ビジネス形態で後述する、素材メーカーから素材を調達するものの二種類がある。自社で健康食品につながる素材を探す場合、大手企業では、素材のライブラリーを用いることが多い。また、農学部や薬学部など、大学や研究機関と提携して素材探索を行う企業もある。

続いて、このようにして探し当てられた素材のもつ健康機能について科学的に証明し、評価する。この段階が機能評価で、試験管試験、動物試験、臨床試験などを実施する。ここでは大学の医学部や病院、後述する臨床受諾機関と主に提携する。特定保健用食品の場合、臨床試験は必須であるが、それ以外の健康食品では、動物やヒトを対象とした試験による機能評価は、実施することが望ましいが、必須ではない。しかし、食品である以上、安全性試験については、特定保健用食品でなくても実施しなければならない。

次の工程が商品化である。健康食品のタイプには、その形状から食品と錠剤・カプセルの二つがある。摂取しやすい点を重視する、あるいは素材や成分の性質により食品として適当でない場合は、錠剤・カプセル型で開発する。一方、味を重視する場合は、一般の加工食品と同様に開発することになる。

特定保健用食品の開発過程には、商品化の後に審査という工程が入る。企業からの申請を受けて、厚生労働省による承認審査が行われる。特定保健用食品の表示許可が下りれば、その健康機能を表記できる。
最後に、製造という段階がある。ここでは、原料を調達し、商品を製造する。健康食品の業界には分業化が進んでいて、この工程を他の企業に委託する場合もある。

2.1.4 医薬品の開発との比較
健康食品と医薬品の開発プロセスには似ている点が多い。新薬開発の過程では、まず医薬品候補物質を探索して選択を行い、その物理化学的な性状を調べる(素材探索)。次に、毒性、薬効薬理、一般薬理、薬物動態に関する非臨床試験と臨床試験を行う(機能評価)。また、医薬品の用途に合わせた製剤、製造法の検討も行う(商品化)。その後、厚生労働省にその医薬品の製造販売の承認申請を行って、承認を受けなければならない(審査)。承認を受けると、生産・販売を開始し(製造)、副作用の報告や再審査などの市販後調査を行う。このように、新薬開発には、健康食品における素材探索、機能評価、商品化、審査、製造に該当する工程が含まれている。新薬開発には厚生労働省の承認審査が必要であることから、健康食品の中でも特定保健用食品の開発過程が特に医薬品の場合と類似しているといえる。

しかし、健康食品と医薬品では開発にかかる費用、期間が大きく異なる。新薬開発の方がはるかに長期にわたり、また莫大な費用が必要となる。厚生労働白書(2004)によると、一つの新薬を開発するのには9~17年、260億円~360億円がかかる。一方、特定保健用食品以外の健康食品の開発期間は約1~5年しか要しない。特定保健用食品の場合、試験管試験などの機能評価を行って審査を受ける必要があるため、開発には約3~10年を必要とする。開発費に関しては、健康食品の開発プロセス全体にかかる費用について資料がなかったため、機能評価の工程だけに着目して比較する。特定保健用食品の機能評価には数千万~数億円程度の費用がかかる一方、医薬品において機能評価に該当する非臨床試験や臨床試験に要する費用は50億~数百億円に上る。機能評価の工程だけを比較しても、医薬品が特定保健用食品よりもきわめて大きな資金を必要とすることが分かる。特定保健用食品は一般の健康食品よりは費用や期間を要するが、一般的には医薬品に比べればその開発は短期で、少ない資金で可能である。

2.1.5 ビジネス形態
健康食品では食品メーカーは当然ながら、製薬企業も商品開発を行っている。その原因の一つに、医療用医薬品ではない一般医薬品市場の縮小が挙げられる。一般医薬品とは、薬局やドラッグストアで消費者が手に入れることができる薬品である。近年の健康志向商品の急増や価格の下落などにより、一般医薬品の売上高は急速に売り上げを伸ばす健康食品に比べて低落している。また、前述したように、健康食品の開発は医薬品開発と似ていて医薬品開発のノウハウが生かせることもあって、一般医薬品を中心に製造、販売を行う企業もまた、健康食品の商品開発、販売に参入してきているのが現状である。

そのほかにも、開発プロセスの全過程を行うのではなく、ある特定の段階のみを担当する企業がある。健康食品の分野においてはこのような分業化が進み、大小さまざまな企業が参入している。例えば、機能評価の調査を請け負う研究所や、各食品メーカーに素材を提供する素材メーカーがある。

前者は、健康に良いとされる食品成分や素材の機能を科学的に評価したり、企業の依頼を受けて特定保健用食品の申請の際に必要な臨床試験を実施したりする。バイオベンチャーである総合医科学研究所はその一例である。この企業では、臨床試験1件あたりの受諾報酬が4000万円前後と見られる。近年の特定保健用食品のブームを受けて総合医科学研究所は急成長を遂げていて、2000年6月期には1億円強だった売上高が、わずか4年で15億8600万円に達したと推計されている。その事業拡大の要因として、5000人以上の被験者バンクを持ち、独自に開発したバイオマーカーを用いて食品成分の効果を定量化したことがある。

素材メーカーは、健康食品に使われる素材を製造し、大手メーカーに供給する。その代表格が花王、キリンビバレッジ、日本コカ・コーラなどに茶カテキンを提供する三井農林である。三井農林は紅茶メーカーであるが、茶葉事業の2003年度の売上高は、総売上高の約3割に当たる約150億円に到達した。最近では花王の「ヘルシア緑茶」に含まれる商品名「ポリフェノン」という茶カテキンを提供している。三井農林は健康食品だけでなく、現在、茶カテキン成分を使った医薬品開発にも乗り出している。三井農林以外にも大きな成功を収めている企業には、サントリーの「フラバン茶」に使われるフラバンジェノールを供給する東洋新薬、大豆ペプチドを生産する不二製油がある。いずれの企業も独自の製法で生産する素材を持つことで、近年急成長している。

<参考資料>
 『医薬品の開発と生産』 日本薬学会編 東京化学同人(2005)
 健康食品ビジネスの手引き
 http://www.hkd.meti.go.jp/hokio/health_foods/report.pdf
 『厚生労働白書 健康を取り巻く健康リスク―情報と協働でつくる安全と安心—』 厚生労働省編(2004)
 『食品工業』 2004年4月15日号 光琳書院
 『食品と開発』 2005年3月号 健康産業新聞社
 『日経ビジネス』 2004年8月2日号 日経BP社

2.2 健康食品の利用実態
我々の健康に対する関心は年々高まってきているが、ある調査(注1)によれば健康に関して特長的かつ共通的な意識を持つグループとして以下の表2-2にある4つのグループが挙げられており、健康食品の購買層もこれら4つの層が中心になっている。

表2-2 共通した健康意識を持つグループ

 

層の名称

健康に対する意識

1

若い女性層:高校生から30歳くらいまでの独身女性

「美しくありたい健康」という意識から、美容への関心が高い

2

主婦層:成人するまでの子供を持った主婦

最も健康意識が高い。自分自身に対しては美容、子供に対しては虫歯、栄養バランスなど健康維持と成長への関心が高い。

3

若い男性層:高校生から30歳くらいまでの独身男性

口臭、虫歯、疲労回復などへの関心がある

4

男女高齢層:60歳以上の男女

脳機能、コレステロール、肝機能など病気関連、または疲れや痛みなのへの関心が高い

(注1)田村力・中村哲夫「健康・機能性食品開発法」
一般消費者450人を対象にしたアンケート調査(2000年11月)による
また、以下の図2-2-1(注2)から分かるように、全体的に男性よりも女性の方が健康志向は強く、そのため健康食品の購買意欲が高い傾向にある。この中でも主婦層は健康食品への関心が特に高いとされていて、40代までの女性が他と比べ特定保健用食品を購入したことのある人の割合が高いことからもこのことが窺い知れる。最近は生活習慣病関連の商品が増えており、今後は健康食品に対する潜在的なニーズが大きい60代以上の高齢層による購入が増えていきそうだ。

(注2)日系BPコンサルティングの調査(2003年8月)による
(出所:日経食品マーケット2004年2月号)

そして、食と健康に関する情報の入手先を示した興味深いデータが図2-2-2(注3)である。このデータによれば、テレビやラジオの番組、インターネットなどのマスメディアが大きな情報源となっていることがわかる。このことを反映してか、通信販売や訪問販売が購入経路の主流となっていて、これが健康食品の市場実態を分かりにくくさせている原因でもある。

これらの情報源は比較的容易に利用でき、情報は得やすい反面、視覚や聴覚に訴えて不必要に購買意欲をあおり、買わせようとする企業やメディアの思惑もある。情報に踊らされ間違った認識をしないよう、十分に注意する必要があるといえるだろう。















(注3)日本健康・栄養食品協会「食と健康に関するアンケート」 2001年9月調査
NTTデータのホームページhealthクリニックを利用した全国の10代以上の男女対象

<参考資料>
 「健康食品」の現状
 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/anzen/hyouka/shiryo/041007ken2_02.pdf
 健康食品ビジネスの手引き
 http://www.hkd.meti.go.jp/hokio/health_foods/report.pdf

2.3 海外との比較

2.3.0 イントロダクション
食品市場全体が伸び悩む中、健康食品は2004年には12%近い成長率を記録し、右肩上がりの堅調な伸びを続けている。健康食品市場は、高齢化社会の到来、生活習慣病の増加、医療費の自己負担など社会環境の変化と、それと対応して高まる健康ニーズに支えられ今では1兆2300億円の規模にまで成長した。日本の健康食品市場について海外の市場動向と比較することでより詳しく見ていきたい。

2.3.1 日本と海外の市場規模
今、全世界の食品市場においても機能性食品は5~10%と、食品分野の中で最も大きな成長率を示しており、その市場規模は従来の食品・飲料市場の約6分の1になる950億USドルにものぼる。サプリメント市場(150億ドル)、一般の大衆薬や処方薬を含んだ医薬品の市場(1100億ドル)の成長率はそれぞれ3~5%、2~3%といわれ、その拡大速度という面では安定してきている中、健康食品はその成長速度からも、新たな健康の維持・改善をもたらすものとして大いに注目されるようになってきているといえるだろう。各国、各地域別にみてみると、健康食品の市場規模は、アメリカでは220億ドルといわれており7%の成長率を示している。ヨーロッパ連合では、全体で120億ドル。しかし東ヨーロッパと西ヨーロッパで格差がはげしく、全体の92%を西ヨーロッパの市場がしめている。国別では、最も大きな市場がイギリスで26億ドル、次にドイツ、フランス、イタリア、スペインと続く。また、北、南でも受けいれられ方がことなり、北ヨーロッパでは栄養成分を添加した機能性食品に対してよりオープンであるのに対し、南のほうは、自然のままを食べることがよいという考えがつよく、成分添加にあまりオープンではない、という傾向がみられる。

2.3.2 各国・地域ごとにみた分野別機能性食品
では健康食品市場において、どのような食品が市場に登場し、ニーズがあるのか詳しく見てみる。すると、各国・地域により非常に隔たりがあることがわかる。日本では、特定保健食品として最も多い品目は、おなかの調子をととのえる食品つまり、乳酸菌やオリゴ糖、食物繊維関連の食品である。次に血糖値上昇抑制作用食品、コレステロール低下作用食品、血圧低下作用食品、カルシウム吸収促進食品とつづく。EUでは肥満や減量のために利用されている傾向がつよく、次に心血管系、心臓病のために用いられ、その後にエネルギーに関した食品、胃腸管のための食品、免疫系を高めるような食品、骨や歯の健康を考えた食品として利用されるようである。アメリカ市場は他のどの地域とも異なり、まずリウマチなどの関節炎や骨に関した食品が非常に人気があるようである。

日本

1.乳酸菌、オリゴ糖、食物繊維関連食品

2.血糖値上昇抑制作用食品

3.コレステロール低下食品

4.血圧低下作用食品

5.カルシウム吸収促進食品

EU

1.肥満、ダイエット関連食品

2.心血管系、心臓病関連食品

3.エネルギー補充食品

4.消化管、腸内細菌、消化関連食品

5.免疫系関連食品

アメリカ

1.骨粗鬆症に対応した食品

2.関節炎に対応した食品

3.ダイエット関連食品

4.関節や軟骨の修復に対応した食品

5.高血圧に対応した食品

2-3-2 日本とEUにおける機能性食品の人気の違い

このように健康食品の各食品分野への浸透度合いにばらつきが生じているのは、各国・地域の食文化また健康状態によるものも大きいであろうが、もう一つの原因として、政府による健康食品の位置付け、商品開発への規制の度合いが異なるから、といえるであろう。たとえば、日本においては特定保健用食品の申請がおなかの調子を整えるような食品に対してしやすくなっている、という現状があげられる。

2.3.3 各国・地域における機能性食品の位置付け
日本において機能性食品は、健康の保持増進の効果が科学的根拠に基づき期待できるとされる食品は、厚生労働省により特定保健用食品と栄養機能食品とに定められており、これらはその食品のもつ効果が期待できる旨を表示できるとされている。(表2-3-3参照)その他に法的に定義されていない「いわゆる機能性食品」が存在し、これは全機能性食品の約3分の2をも占める。この「いわゆる機能性食品」は成分表示が認められていないことが多く、あいまいな情報提示しかできないという問題がある。

表2-3-3 特定保健用食品制度

特定保健用食品

食品機能を有する食品の成分全般を広く関与成分の対象として、ある一定の科学的根拠を有することが認められたものについて、特定の保健の用途に適する旨を表示するもの。

栄養機能食品

関与成分として、人間の生命活動に不可欠な栄養素のみを対象とし、一定の規格基準を満たすことを条件に、栄養素の機能の表示(コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)が定義する「栄養素機能表示(Nutrient Function Claims)」)を行うもの。

一方で、アメリカでは法律による機能性食品の定義は存在せず、一般的に機能性食品は栄養素、機能性成分を加えた一般食品であるとされているだけである。しかし商品の成分表示には日本よりもはるかに厳密な規制が存在し、GRASと呼ばれている栄養素、機能性成分を含むことが必要とされる他、健康効能表示は14項目に分類されており、さらに信頼性のカテゴリー(A~D)に分類される。またラベル表示においても日本と異なり、文書、パンフレット、ビデオ、ウェブサイトなど広くに渡り規制をうけている。このように、アメリカでは、適確な情報を積極的に提示することにより、消費者の自己責任において、機能性食品の選択、利用を行うようにさせる体制がとられている。一方で、日本では、特定保健用食品は個別審査を通じて認められているという点からもわかるように、個別の商品の安全性・有効性が丁寧に検討されている。これは消費者の保護に重点がおかれており、消費者にとっては安心な制度であるが、審査に多くの労力と時間を要するため、かえって新しい食品を参入させにくくさせ、封鎖的な市場を作り出してしまっているともいえる。2005年に「いわゆる機能性食品」をより法的に規制し、成分表示などを認めやすくするような制度、新特定保健用食品制度が誕生しているが、これが今後機能性食品市場の成長にどれだけ大きな変化をもたらすかが期待されている。

 <参考資料>
 『食品と開発』 2005年1月号 健康産業新聞社
 『食品と開発』 2003年12月号 健康産業新聞社
 FDAホームページ http://www.cfsan.fda.gov/~dms/ds-oview.html#what「健康食品に係る今後の制度のあり方について」厚生労働省

不老不死への科学