【要旨】
がんは昭和56年以降死因の第1位となり、平成14年には総死亡の31.0%をも占めるようになった。このことからもわかるように、がんは私たちにとってより身近な病気になってきている。
にもかかわらず、その治療となると外科手術ばかりが強調され、抗がん剤については副作用のイメージばかりが先行し、実際の効果について触れられることは少ないのが現状である。
しかし、最近はがんに特異性の高い標的に作用する分子標的薬の開発も積極的に行われており、すでに医療の現場で使われ始めている。
ここではこのように最近再び注目を集めている抗がん剤を従来から使われてきた細胞障害性抗がん剤(前編)と最近注目を集める分子標的薬(後編)の二つの分野に分け、がん発生のメカニズムを含めたその作用機序を概観した。
さらに、抗がん剤を使う上で発生する問題についても考察を行った。