4章 〜イレッサ〜
近年の新聞を最も賑わせている抗癌剤と言えば間違いなくイレッサが出てくるであろう。イレッサは一般名をゲフィチニブと言い、アストラゼネカ社によって開発された分子標的薬である。イレッサが何故このように人々の話題となるのか、それを様々な角度で見ていきたいと思う。
4.1 イレッサとは
販売名
和名:イレッサ錠250
洋名:IRESSATablets250
一般名
和名:ゲフィチニブ(JAN)
洋名:Gefitinib(JAN) gefitinib(p-INN)
化学名(命名法)
N-(3-Chloro-4-fluorophenyl)-7-methoxy-6-[3-(morpholin-4-yl)propoxy]quinazolin-4-amine(JAN)
治験番号:ZD1839
イレッサの作用機序
腫瘍細胞はその表面で上皮細胞成長因子受容体(EFGR)が過剰に発現し、このEFGRで増殖に必要なシグナルを受け取っている。イレッサはこのEFGRのチロシンキナーゼを選択的に阻害することにより、癌細胞の増殖能を低下させる薬剤である。腫瘍細胞を縮小させる働きを持つが、現時点ではその機序は解明されていない。
イレッサの詳細
投与は一日一回の経口投与である。主に手術状態まで進行したり、再発したりした進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者に投与されている。また頭頸部癌、乳癌などへの効果も期待され、臨床試験が行われている最中である。
4.2 イレッサの歴史
2001.5.16第37回米国臨床腫瘍学会(ASCO)においてアストラゼネカ社が第Ⅰ相試験の最終試験の結果など、イレッサに関するデータを発表。
第Ⅰ相試験の結果、非小細胞肺癌へのZD1839(Iressa)の臨床効果が確認された。主に持続性や、NSCLC患者においての忍容性などである。
また、第Ⅲ相試験に登録する患者のリクルートが記録的短期間のうちに完了したとアストラゼネカ社は伝えている。
2001.11.1 最初の第Ⅱ相臨床試験の結果、NSCLCにおいてZD1839は抗腫瘍作用を示したと発表。ZD1839が前治療で効果が認められなかったNSCLC患者の50%以上で、癌が半分以下に縮小するかあるいは病勢安定をもたらした。
2002.1.28 アストラゼネカ社は海外に先駆けてZD1839の非小細胞肺癌の適応について輸入申請を厚生労働省に提出。
2002.7.5 アストラゼネカ社はイレッサの輸入承認を、手術不能または再発非小細胞肺癌の効能・効果で厚生労働省より取得。これは世界初であり、抗エイズ薬を除けば最速で承認された申請である。
2002.8.30 中央社会保険医療協議会が8月21日に総会でイレッサの薬価収載を了承したことを受けて、アストラゼネカ社はイレッサ錠250を発売開始。中央社会保険医療協議会の公開資料によると薬価は1錠7216.10円である。尚、市場導入は2002.7.16から開始されている。
2002.10.15 「イレッサ錠250による急性肺障害、間質性肺炎についての緊急安全性情報」をアストラゼネカ社が発出。7月16日から10月11日までの間にイレッサとの関連性を否定できない間質性肺炎を含む肺障害が22例あることを報告している。
2002.10.22 欧州臨床腫瘍学会でイレッサの新しいデータが発表。NSCLC患者を対象とした第Ⅲ相無作為比較試験において、イレッサが白金製剤ベースの標準化学療法単独投与との比較において延命効果を示さなかった。
2002.12.6 「イレッサ錠250使用の関連が疑われている急性肺障害・間質性肺炎の検討を目的とする第一回専門家会議」がアストラゼネカ社によって開催。専門家会議の結果イレッサ錠250は治療の選択肢の少ないNSCLC患者にとっては副作用の危険性より薬剤の有効性が大きいこと、イレッサ錠250による急性肺障害・間質性肺炎の発現率は他の肺癌治療薬における発現率より有意に高いとは言えないことなどが話し合われた。
2002.12.25 厚生労働省が「ゲフィチニブ安全性問題検討会」を開催
2003.2.6 アストラゼネカ社はイレッサ錠250の投与に伴う間質性肺炎・急性肺障害に関して発足させた専門家会議の中間報告記者説明会を開催。
2003.3.17 アストラゼネカ社が、イレッサの適正使用に向け、急性肺障害に関連する遺伝子多型に関する共同研究を東大の中村教授と実施すると発表。
2003.5.1 アストラゼネカ社はイレッサの承認を日本に次いでオーストラリアで取得。
2003.5.5 アストラゼネカ社はイレッサの承認を米国FDAより取得。
2004.7.15 京都府の元会社役員男性の遺族4人が全国で初めてアストラゼネカ社と国を相手取り、慰謝料などを求める訴訟を大阪地裁に起こす。訴訟によると、男性はイレッサを一週間服用したところ、まもなく呼吸困難に陥り、約一ヶ月後に副作用の間質性肺炎によって死亡した。
2004.11.29 治療中に死亡した女性の遺族がアストラゼネカ社と国に対して損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こす。
2004.12.17 アストラゼネカ社が2003年7月から2004年8月までに実施した治療抵抗性のNSCLC患者の生存期間に関するISEL試験の初回解析結果を発表。これによると、イレッサの代わりにプラセボを服用していた患者と比較してイレッサを服用していた患者では、腫瘍縮小効果においては統計的に有為な改善が見られたが、主要目的である生存期間に関しては統計的に有為な延命効果に至らなかったと報告された。ただし、374名の東洋人(日本人を含まない)の患者を対象とした解析では生存期間が改善されることを示唆している。
2005.1.4 アストラゼネカ社はイレッサの欧州連合(EU)当局への承認申請を取り下げると発表。
2005.3.1 イレッサ承認申請資料に関わる一般毒性試験報告書のウェブ上での公開をアストラゼネカ社が開始。
2005.1.20 厚生労働省は専門家を集めてイレッサの有効性の再検討会を開始あ。
2005.2.15 イレッサが2002年7月に認可されて以来の国内出荷量は554万錠に昇ることが明らかにされた。
2005.3.17 厚生労働省の専門検討会において2つの報告。日本肺癌学会はイレッサの新たな使用方針をまとめ、女性・非喫煙者・東洋人などへの使用を推奨した。他方、NPO法人「医療ビジランスセンター」はアストラゼネカ社が行ったISEL試験の対象患者グループの構成に偏りがあると指摘。
2005.3.24 厚生労働省で開かれた最終会合でイレッサの使用継続が決定。東洋人に効果があるという試験結果を受けたものである。
4.3 イレッサに関する事実
1. イレッサは発売当初副作用の報告もなく、NSCLCへの夢のような薬というイメージが先行したために、本来イレッサを処方するべきはずの呼吸器科医や主要専門医の他にも、一般診療所や非癌専門医が処方したり、あるいは他の民間医療との併用をするという本来なされるべきでない処方・使用が行われた。そのため2002年8月30日の発売から同年末までのたった4ヶ月の間に2万人もの患者に投与された。
2. イレッサが異例のスピード承認をされた背景には肺癌には有効な薬が少ないという事実がある。報道陣の批判の的となっているのは、承認審査の早さと死亡数の多さであるが、イレッサの承認が1年遅れてしまったら多数の方がなくなっていたであろうことも否定出来ない。
3. イレッサは死亡に至るほどの副作用をもたらす一方で、劇的に効果が現れる人もいる。その効く人々にはパターンがあるようであり、経験的知識からは日本人女性で非喫煙者の腺癌患者という患者像が浮かび上がっている。この効果の違いはイレッサの標的となる上皮成長因子受容体(EFGR)の遺伝子配列における変異の有無によるものであると指摘している論文もある。実際の肺癌患者を調べると日本人では変異が多く、変異のある人にイレッサが効きやすい傾向があるとの結果も出ている。
4. イレッサ検討会の第4回(2005年3月24日)の開会の冒頭にアストラゼネカ社からデータの修正が行われた。2002年8月の販売から2004年12月までの推定投与患者数を8万6千人と発表していたものを、計算ミスと称し、4万2千人と修正した。
5. 2005年3月にアストラゼネカ社はイレッサの添付文書の改訂を発表した。厚生労働省主催によるゲフィチニブ検討会の結果に基づき改訂したとのことである。行政指導によって、重要な基本的注意の欄に「本剤を投与する際は、日本肺癌学会のゲフィチニブ使用に関するガイドラインなどの最新の情報を参考に行うこと。」と、その他の注意の欄に「海外で実施された1~2レジメンの化学療法歴のある再発または進行非小細胞肺癌患者を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検第Ⅲ相比較臨床試験において、腫瘍縮小効果では統計学的に有意差が認められたが、対象患者全体で生存期間の延長に統計学的な有意差は認められなかった。」と追記することが発表されている。また自主的にその他の注意の欄に「2年間癌原性試験において、ラットの高用量投与群で有意な肝細胞線種(雌雄)と腸間膜リンパ節血管肉腫(雌)の発生増加が認められた。また、マウスの高用量投与群で有意な肝細胞線種の発生増加が認められた」という情報を追記している。また同時に日本人における生存期間に対する有効性を評価するためにドセタキセルを対照とした非盲検無作為化群間比較試験を実施中であると発表している。
4.4 イレッサ援護の声
イレッサによってその致死的な病状から快方へと向かった患者の数は計り知れない。イレッサを飲み始めたきっかけは、医師から勧められた方、自身でインターネットからの情報で飲みたいと志望した方、様々である。イレッサの副作用が大きく報道されるようになった後に飲み始めた患者たちは、その決断をするのに葛藤したようである。
彼らはイレッサの副作用ばかりが大きく報道されること、そして更に承認が取り下げられることを何よりも恐れており、イレッサ検討会には署名を集め提出した。そのような多くの声からほんの一部ではあるが引用する。
・決死の思いで始めたイレッサのために、1ヶ月後にはあれだけ苦しんだ痛みもとれ、肺癌も縮小し、骨に転移して骨折を心配して車椅子だったのが自分の足で歩けるようになった。私達にはイレッサは命を繋ぐ薬です。イレッサの発明されている時期に肺癌になってよかったと思っています。科学・医学の恩恵にすがることが出来たのです。
・どうせ助からない命なら治療ですぐに病人になるより病気が進行して仕方なく病人になる方を選びました。そのほうが病人でいる期間が短くて済むことも魅力でした。
・テレビでイレッサの特集番組がありました。番組では主に副作用が大きく取り上げていましたが、イレッサが効く患者さんもあるようでした。そんな番組をみて「ひょっとしたら私も」という気になったことと病状が悪化するまで病院と縁が切れるという一抹の寂しさもあってイレッサを服用したいと考えました。私は積極的治療を受けていませんから肺ガンで死ぬのも肺炎で死ぬのもたいした違いはありませんでした。百にひとつでも直るならと考えたことと自分が服用することで治験の足しになるのではとも考えていました。そのうえ当時は自宅でも服用が可能でしたから誰にも分からず治療ができるのも魅力でした。最新の治療後の検査では脳のMRI検査でも腫瘍が認められない、肺CT検査の結果も影が大きくはなっていない、との結果でした。このホームページは一年以上も前に準備はできていましたが、いざアップロードを考えると、「ほんまに直っているのか・・・?」ととっても不安になりそれが実際頭が痛くなったり耳鳴りがしたりで「やっぱり再発してダメか・・・。」と弱気になり 周りが心配するほど相当落ち込んだことも度々でした。発症から二年、ようやくアップロードできるようになった次第です。いまは、パソコンを習ってアウトドアーからインドアーへと変身中。仲間の皆さんとたのしく勉強しています。
・今は仕事もしてますし、食欲もありますし、毎日元気に暮らしています。一生飲み続けなければならないですが、この薬のおかげで私は生きることが出来ました。イレッサにはとても感謝しています。
・とても大きな副作用があると聞いて、恐れて不安いっぱいのイレッサの服用が始まったのですが希望を求めての服用になりました。副作用も意外なくらい軽く、土日はいつも外泊して治療を続けていました。体重の減少もなく、白血球の数値も問題なく、体重も全然変っていません。おかげさまで、イレッサがよく効き、4月に入り癌細胞は消え、無事退院することとなりました。手術が出来ないと言われた時は絶望の極地に居たのですが、今はこんなガンでも治る病気だと思ってびっくりしています。
・イレッサを服用したところ、ほとんど、いまのところ副作用がなく、見た目には病人とは思えないほど元気になり、びっくりです。最初は、「死にたい」と繰り返していた母も、イレッサに出会ってから気持ちが明るくなり、前向きに生活しています。不思議なことに、脳に転移しているがん細胞が減ってきているのです。食欲も出て、今では、小旅行が楽しめるようになりました。いろいろな問題が指摘されているイレッサ。でも、医者に宣告された余命以上に生きている人もきっとたくさんいる!チャレンジしてみる価値があるのでは、と思いました。
・マスコミの論調は副作用を経験した患者さんや一部の医学研究者からの否定的意見に重きを置いている傾向が見られます。一方、進行肺がんを専門に治療をしている第一線の多くの医師は慎重な投与で安全性に注意すれば進行性非小細胞肺がんの約30%程度に有効性と臨床的改善が十分期待ができるとしています。そのため、厚生労働省でも本剤の安全性評価について専門医の意見を取り入れて、現時点では慎重な投与を行うことを前提として、特別な処置を必要としないと評価しております。しかし、進行性非小細胞肺がんでイレッサ錠の投与を受けている多くの患者さんの意見はマスコミでも十分取り上げられておらず、この薬剤に大きな恩恵を受け、有効性に期待している患者さんは、厚生労働省が今後の対応において否定的な動きをするのではないかと非常に不安をもっておられると聞いております。
4.5 イレッサ否認の声
イレッサの副作用によって肉親を失った方々は団体を作り、アストラゼネカ社や国を相手取り多くの訴訟を起こすなど、様々な活動を行っている。そのような方々の声もここに書き連ねることなど到底出来ない量あるが、一部を引用する。
・藁にもすがる思いでイレッサに頼っただろう肺がん患者やその家族に、本物の情報は伝えられたでしょうか。そのうえでのインフォームド・コンセントであったでしょうか。患者は、家族は、イレッサを使うと数人に一人は重い害にあい、10数人に一人は死ぬということを知らされ、早く死ぬと知らされ、知って、それでもイレッサによる治療を望んだのでしょうか。
・イレッサの副作用による間質性の肺障害、この副作用は一時間ごとに、いえ、分刻みで容態が悪化していきます。この副作用では、全国で公表されているだけでも500人近い患者が亡くなっていることからみても尋常な副作用でないことが分かります。私達の被害者の会のお一人は副作用を乗り切って今も元気に過ごされています。この方の場合、ご本人の副作用に関する注意の大きさと、副作用が発症した時の主治医の的確な処置と、この医師の日ごろからの副作用情報に対しての情報収集が、被害患者を救うことになったのですがほとんどの患者はなくなってしまいました。被害者の会に集まっている全てが遺族という過去にもあまり例がない薬害といえるのではないでしょうか。
以下はイレッサの副作用によって死亡した患者の遺族が起こしたある訴訟についての記事である。
肺がんの治療薬「イレッサ」の副作用で死亡した男性の遺族が、国と製薬会社に対して 損害賠償を求めている裁判の初弁論が開かれ、男性の二男が、「父はイレサに命を絶たれた」と意見陳述しました。この裁判は、京都の病院で亡くなった男性の遺族が起こしているものです。男性は、おととし、手術ができない重い肺がん患者の治療薬として輸入承認されたばかりの「イレッサ」を服用 しましたが、1ヵ月後に肺炎を発症して亡くなりました。このため遺族は、「イレッサの副作用で 死亡したことは明らかだ」とした上で、「販売元は副作用について警告しなかった。国は十分な 調査なしに輸入承認した」として、慰謝料など3300万円を求めています。初弁論では二男が 意見陳述し、「イレッサは重い副作用があるとされず、当時かぜ薬のように手軽に服用されたまぎれもなく父はイレッサに命を絶たれた」と述べました。
またイレッサを否認する立場の人々は厚生労働大臣に以下のことを要求している。
・イレッサはEFGR遺伝子変異の有無にかかわらず延命効果がないと判断すること
・イレッサの一般使用を中止すること
・EFGR遺伝子変異以外の有望な生命予後改善因子を発見するための探索的臨床試験 以外には、大規模臨床試験への使用も中止すること
・現在、一般臨床ならびに、臨床試験において使用中で、患者が継続を希望し、医師も適切と判断する場合には、無償でアストラゼネカ社からイレッサが提供されるように配慮すること
4.6 所見
イレッサを調べることになり、多くのインターネットのサイトに目を通した。というのもイレッサは2002年8月と極最近に正式に販売が開始されたために、今のところイレッサに関する書籍はほぼないからである。インターネットには実に多くのページがあり、その立場は様々であり、真偽を見通すことが実に難しかった。以上の文章は中立の立場を出来るだけ崩さないようにし、様々な面からイレッサに関することを綴った。
ここで私の感想を述べてみたいと思う。私としては、どちらに付くかと問われればイレッサを容認する立場の方に付くと思う。イレッサ薬害被害者の会、医薬ビジランスセンターなどのイレッサ否認の立場である団体の主張の多くは、アストラゼネカ社が行った実験のデータの問題のある部分を過大に解釈し、またアストラゼネカ社や厚生労働省の対応に関しても、1つ1つのことに欠点を見出そうとしているような印象を受けた。例えば延命効果がなかった事実を過剰に批判しているが、彼らは同時に延命効果がなくとも、癌を縮小しているというデータを示している。イレッサの最終目標が延命であったとしても、現段階で少しでも病状が快方に向かうのであれば、薬害と称しイレッサの存在自体を否定する必要があるのだろうか。確かに本来病気を治すはずの薬剤によって、死亡という結果に陥ってしまった患者が多数いることは問題であり、被害者の家族が感情的になるのは理解出来ることである。ゆえにこのような事態は改善しなくてはならない。しかしそこでイレッサの承認の取り下げを請うのはやや短絡的ではないだろうか。事実イレッサに代わる決定的な肺癌の薬は開発されておらず、イレッサによって命を救われた患者の数は計り知れない。現段階で承認の取り下げが行われるとイレッサによって病状が快方に向かっている患者たちに取っては致命的であろう。
このようなことにより私はイレッサ容認の立場を取る。イレッサによってこれからも多くの患者が救われるべきであると思う。但しアストラゼネカ社・そのほかの多くの関係者たちはイレッサの研究を更に行い、副作用の大小が何故起こるのかを早急に突き止めねばならない。イレッサの問題点ばかりを粗探ししているように思えたイレッサ薬害被害者の会の文章には疑問を多く感じたが、その中で気になる部分があった。その部分を以下に引用する。
危険率の高い抗癌剤の問題を議論するときに、まず最初に考えなければならない問題は、その薬が全ての患者に対してベネフィットが得られる薬であるかどうかです。一部の人に効くが一部の人には害になる、この開きがおおきいのであれば当然、皆で考えていかねばならないのではないでしょうか。
副作用で死亡した患者は少ない、服用している患者はこんなにも沢山いるのだから・・といった身勝手な発想ではなく、一様にベネフィットが得られる方法を模索し続けて行かなければ、いつかは自分の身にふりかかる有害事象となるのです。自分には副作用が起きませんように・・を願うのではなく使用する全ての患者に、命に関わるような副作用が起きないように、が基本のはずです。
これまでに使用されてきた既存の抗癌剤は、確かに副作用の死亡確率はズバ抜けて高い薬です。このことは全ての患者も家族も承知はしていると重います。今回のイレッサのように、発売当初、副作用はないとか、安全だとか、医師にすら、情報が伝わっていないような抗癌剤は別としても、抗癌剤の使用について「患者の自己責任論」が罷り通ってしまうと、医師の知識によって、各医療機関の格差によって、 それぞれの患者の知識レベルによって、地域の格差によって大きく異なってしまい、多くの患者に不利益が出る結果にもなります。
薬とは全ての患者にとって有益となることを目標とすることが基本である、さらに全ての薬は患者によってその有益さの格差があってはならない、という彼らが主張していることを実現することは困難極まる。しかし薬学部でこれから薬を創ることを学ぶものとして、肉親を失った方々によるこの悲痛な叫びを忘れてはならないだろう。
イレッサは発売当時に囁かれたように夢の薬とはならなかった。しかし重篤状態の多くの患者の命を救ったことも確かである。その副作用の詳細が解明されることを期待しつつ、現段階は医師のインフォームド・コンセントを充実させることにより使用を続けることが一番よいのではないだろうか。
4.7 参照サイト
http://www.astrazeneca.co.jp/
http://homepage3.nifty.com/i250-higainokai/
http://www.npojip.org/
http://www.yodosha.co.jp/bioventure/bionews/n31.html
http://www.icknet.ne.jp/~abehs335/
http://www.tvk.zaq.ne.jp/efabt202/
http://www.icknet.ne.jp/~abehs335/seikan01.htm
http://d-inf.org/drug/iressa2.html
http://f57.aaa.livedoor.jp/~cancerit/archive35.html
http://www.wjtog.org/gefitinibaprove.html